「胸も生理もいらない」
〝瘦せることがすべて〟の女性が
あなたの身近にもいませんか。
摂食障害になった女性たちとの30年余りの交流の軌跡が話題の書に!
「少女は、糸のようにほっそりしていた」「蔓つるのように細くなよなよとして、溜息でも、ふきとばされそうだった」
彼女ほどではないにせよ、主人公の老いた男性も、後半に登場する老女も、かなり細い体型です。たしかに、力仕事からも解放されていますし、性行為や出産もしないのであれば、筋肉も脂肪も必要最小限でいいのかもしれません。
そんな人類の「変化」については、興味深い説があります。それは四足歩行だった時代、女性の胸はふくらんでいなかったというもの。男性への性的アピールは、もっぱら尻で行なわれていたといいます。しかし、二足歩行になり、目と尻の距離が広がったことで、目に近いところにある「胸」が新たな性的アピールの部位になっていった、というわけです。
実際、哺乳類において、授乳期以外でも胸がふくらんでいるのは人間の女性だけだとか。その特異性を思えば、説得力のある見方といえるでしょう。
とまあ、長い目で見れば、人類の生態は心身ともに大きく変化しますし、それにあわせて「多数」と「少数」のバランスも変化します。いつか本当に「胸も生理もいらない」世の中が来ないとは誰も言いきれないのです。
というより——。人類はテレビや携帯電話、原子力発電、ロケットなど、かつてはSF的空想の産物でしかなかったものを次々と現実化してきました。この『オルガ』に描かれる世界もけっして絵空事ではなく、遠い未来の現実のような気がしてなりません。
なぜなら、人類はすでに「生殖」のかたちを科学によって大きく変えようとしています。試験管ベビーにクローンなどなど、自らの種の営みにまつわる問題を自在に操ろうとし始めているのです。