「なぜ死に魅入られてしまったのか?」
プリンセスたちと摂食障害の深い関係。
摂食障害になった女性たちとの30年余りの交流の軌跡が話題の書に!
ではなぜ、大君はそこまで食を拒む必要があったのでしょうか。神田龍身は『源氏物語=性の迷宮へ』(註5)のなかでこんな分析をしています。
「(略)大君自身にも理由がわからぬままに死への衝動がまずは無条件にあり、具体的な理由づけはあとから付与されているのだ。(略)大君は事態をことさら悲観的にとらえ、必死になって死ぬ理由をさがしている」
これはシシィが終生持ち続けた、死への憧れをさらに前へ進めたものといえるでしょう。
それにしても、身分的には恵まれているはずの「姫」という立場と「死」というものは一見、結びつきにくいものです。しかし、このふたつの要素は意外と隣り合わせだったりもします。その裏づけとなるのが、世界中で愛されるメルヘンの存在です。
(註1)『歴史秘話ヒストリア』2011年1月3日放送(NHK総合)
(註2) 『天使の食べものを求めて―拒食症へのラカン的アプローチ』ジネット・ランボー/カロリーヌ・エリアシェフ(三輪書店)
(註3)『ロッキング・オン・ジャパン』1988年4月号(ロッキング・オン)
(註4)『女人源氏物語(五)』瀬戸内寂聴(小学館)
(註5)『源氏物語=性の迷宮へ』神田龍身(講談社選書メチエ)
(つづく……。※著書『瘦せ姫 生きづらさの果てに』本文抜粋)
【著者プロフィール】
エフ=宝泉薫(えふ=ほうせん・かおる)
1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』などに執筆する。また健康雑誌『FYTTE』で女性のダイエット、摂食障害に関する企画、取材に取り組み、1995年に『ドキュメント摂食障害—明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版。2007年からSNSでの執筆も開始し、現在、ブログ『痩せ姫の光と影』(http://ameblo.jp/fuji507/)などを更新中。