UFJ貸し金庫窃盗犯も、水原一平もギャンブル依存症!現代日本の社会課題「依存症」その真因を専門家が解き明かす
佐藤城人氏インタビュー〈前編〉
昨年3月にメジャーリーガー・大谷翔平選手の専属通訳を解雇された水原一平氏(以下、水原氏)。彼は、違法賭博に手を出し、大谷選手の口座から約26億円ものお金を送金した罪で裁判を受けている。そして解雇された直後に「自分はギャンブル依存症」と告白した。さらに、いま世間を騒がせている三菱UFJ銀行の貸し金庫窃盗犯もそうだったようだ。件の女性元行員は過去、競馬で首が回らなくなり借金を抱え、さらに今回貸し金庫から盗んだ金品は海外FX——「投資」の皮をかぶった丁半博打——での損失補填にあてたと報道されている。
今回の件で思い知らされたのは、「依存症」の怖さである。水原氏だけでなく、地位も名誉も得た人が、ギャンブル、薬物、アルコールなどに溺れて全てを失ってしまう。もちろん著名人だけでなく、一般人でも人知れず依存症に苦しんでいる人は多い。心理カウンセラー育成やカウンセリングでメンタルケアをしている一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会代表・佐藤城人氏へインタビュー。依存症の原因や特徴、そして治療法について詳しく伺った。〈前編〉では依存症の真因を探る。(2024年8月初出記事を再配信)
■「機能不全家族」で育った人が依存症になりやすい
佐藤氏によれば、家族としての機能を失った「機能不全家族」で育った人が依存症になりやすいという。大きくわけて3つのパターンがある。
「1つ目が、親から虐待・ネグレクトを受けたり、厳しいしつけがされてきた人です。2つ目が、超過保護あるいは超過干渉な親に育てられた人です。3つ目が、親の期待に応えようとしてきた人です。これは例えば『お前は医者の息子なんだから、将来医者になるんだ』『あなたはお兄ちゃんなんだから、兄弟の面倒見てね』と言われてきたような人です。ヤングケアラーも間接的に親の期待に応えようとしていますので、ここに含まれます」
これら、機能不全家族の3パターンに共通するのは「親からの愛情不足」だという。1つ目と3つ目はわかりやすいだろう。2つ目の「超過保護あるいは超過干渉」がなぜ愛情不足になってしまうのか。
このパターンの親は、「自分が変な親と思われたくない」と世間体ばかりを気にしている場合がある。周囲には「愛情をたくさん注いでいる」と言っているが、子どもの方を見ていないのだ。そうして育った子どもは、心の中に空洞のようなモヤモヤを抱えたまま大人になる。このモヤモヤがインナーチャイルド(内なる子ども)の正体で、依存症の温床だ。この空洞を満たすために、依存する対象を見つけようとする。