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ギャンブル依存で道を踏み外した水原一平。今彼に必要なのは「一本の蜘蛛の糸」だ

佐藤城人氏インタビュー〈前編〉

 

◾️日本でどのように依存症の治療をしていくか

 

 水原氏はアメリカの永住権を剥奪され、裁判終了後、日本へ強制送還される見込みだ。そうなると日本に帰国してからギャンブル依存症の治療をスタートさせるだろう。依存症の治療は自助グループがサポートをしていく。
自助グループはあらゆる依存症において存在している。
田代まさし氏が、2019年に麻薬取締法違反で4回目の逮捕をされるまで勤務していたダルクは麻薬依存症の自助グループ、アルコール依存症では全日本断酒連盟、ギャンブルでは全国ギャンブル依存症家族の会などが治療のサポートをしている。

 自助グループでは、患者が過去の自分の体験談をワーッと喋るところからスタートだそう。「言いっぱなし」「聞きっぱなし」であえて議論はしない。議論をすると間違い探しが始まってしまい、患者が抱えている生きづらさを解消できないからだ。

 治療には佐藤氏のような心理カウンセラーも携わり、依存症のための心理療法で治療をしていく。使われるのは、認知行動療法マインドフルネスやソーシャルスキルトレーニング(SST)など人によってさまざまだ。また医師による薬物治療も選択肢の一つである。

 もし治療中に「スリップ」といって飲酒やギャンブル、薬物を使用したときも責めたりせずに再び治療を続けていくのが大切だそうだ。そこで先述したように「ウソつき」と言って責めてしまうと、元の木阿弥になってしまう恐れがある。

 日本では、まだまだ依存症患者への理解が進んでいない。自己責任論が強く、同じ精神疾患の患者からも「でも自分でやりたくてやったのでしょ」と言われてしまうそうだ。

 マスメディアの水原氏への報道を見ていても、「(水原氏が)自分でやりたくてやった」というメッセージを暗に感じる。

 日本は依存症患者に対して優しい国ではない。日本政府はギャンブルで金儲けをするために2030年に大阪でカジノを含む統合型リゾート(IR)が開業する。大阪府と政府は依存症対策をすると言っているが、日本ではギャンブル場運営側が依存症対策をほとんど負担していない。民間に任せきりの状況だ。こうした状況の中で治療ができるのか不安ではある。

 

取材・文:篁五郎

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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