瘦せ姫が生きづらさを共感し、
助け合える場所はどこなのか?
摂食障害になった女性たちとの30年余りの交流の軌跡が話題の書に!
つまり「摂食障害者はそもそも他人に合わせるのがうまい」から、共感はけっこうできる。それ以上に大事なのは「違いがあっても人は一緒にいられる」ことに気づいたり、ときには離れることを選んだりしながら「柔軟にしなやかに、したたかに生き残っていく」ことなのだと。
もちろん、その境地にたどりつくことの難しさも彼女は指摘します。実際、これは童謡詩人の金子みすヾが詠った「みんなちがって、みんないい」という人類的理想に通じるものですから。
この理想が万人にとっての現実になれば、戦争だってなくなるでしょう。ただ、それを巧みに言語化した金子自身も、夫との不和から幼い娘を奪われたことに抗議して自殺という最期にいたりました。「みんなちがって、みんないい」は所詮、砂上の楼閣のようなものなのかもしれません。
実際、ある瘦せ姫はこう言います。
「みんなちがってみんないい、なんて嘘。同じじゃなきゃ、嫌われるだけ」
それでも、インターネットを通じ、瘦せ姫同士の友情が育まれていることは事実ですし、自分自身も瘦せ姫とそのファンという関係性において、かけがえのない交流を経験しています。心の助け合いは、それなりに成立しているのです。
インターネットという現代のコミュニケーションツールは、摂食障害という現代的な病にとって一縷(いちる)の希望である、ということは信じてよいのではないでしょうか。
(註1)『小説家の休暇』(新潮社『決定版 三島由紀夫全集 第28巻』所収)
(註2)『多様化する摂食障害からの回復と成長NABA全国出前セミナー2014』(NABA:日本アノレキシア・ブリミア協会)
(つづく……。※著書『瘦せ姫 生きづらさの果てに』本文抜粋)
【著者プロフィール】
エフ=宝泉薫(えふ=ほうせん・かおる)
1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』などに執筆する。また健康雑誌『FYTTE』で女性のダイエット、摂食障害に関する企画、取材に取り組み、1995年に『ドキュメント摂食障害—明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版。2007年からSNSでの執筆も開始し、現在、ブログ『痩せ姫の光と影』(http://ameblo.jp/fuji507/)などを更新中。