「同じ」は同じではない【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第28回 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

「同じ」は同じではない【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第28回

森博嗣 新連載エッセィ「日常のフローチャート Daily Flowchart」連載第28回

 

【洗車と修理と落葉掃除】

 

 昨日は、久しぶりに洗車をした。3台まとめて高圧洗浄機で洗ってから、クラシックカーだけはワックスもかけた。2時間くらいの労働。それから、エンジンブロアを背負って、庭園内の落葉を掃除。これも約2時間。秋本番ともなれば、もっと落葉が大量に降り注ぐ。今はまだウォーミングアップの段階。

 木製の椅子の修理を頼まれていて、その段取りをした。庭園鉄道の橋の一部が老朽化していたので、その部材の交換工事も行った。機関車の1台はチェーンが切れたため、横倒しにして修理。それから、貨車の屋根が壊れていたので接着剤で修復。こういう細かい修繕作業を毎日のようにしている。どんどん壊れていくものをつぎつぎ直す、という具合で、人生というのはだいたいこんなイタチごっこだな、と思う。

 社会も同じだろう。日本はこれまでは作る、築く、開発する、成長することばかりに明け暮れていたけれど、そろそろもう壊れていくものの方が多くなってきた。今後は、直して、修復して、騙し騙し維持するしかない時代である。

 

自動車に乗ることが大好きなので、ついにマイカーを買ってもらった。しかもベンツのGクラスで色は真っ赤。ラジコンで動かすことができる。乗って走ると最初は緊張していたが、だんだん楽しくなった様子。けっして自分から降りようとはしない。

 

文:森博嗣

 

KEYWORDS:

 

✴︎森博嗣 極上エッセィ好評既刊✴︎

静かに生きて考える   Thinking in Calm Life

✴︎絶賛発売中✴︎

 

 

森博嗣先生のBEST T!MES連載「静かに生きて考える」が書籍化され、2024年1月17日に発売決定。第1回〜第35回までの原稿(2022.4〜2023.9配信、現在非公開)に、新たに第36回〜第40回の非公開原稿が加わります。

 

 

 世の中はますます騒々しく、人々はいっそう浮き足立ってきた・・・そんなやかましい時代を、静かに生きるにはどうすればいいのか? 人生を幸せに生きるとはどういうことか?

 森博嗣先生が自身の日常を観察し、思索しつづけた極上のエッセィ。「書くこと・作ること・生きること」の本質を綴り、不可解な時代を見極める智恵を指南。他者と競わず戦わず、孤独と自由を楽しむヒントに溢れた書です。

 〈無駄だ、贅沢だ、というのなら、生きていること自体が無駄で贅沢な状況といえるだろう。人間は何故生きているのか、と問われれば、僕は「生きるのが趣味です」と答えるのが適切だと考えている。趣味は無駄で贅沢なものなのだから、辻褄が合っている。〉(第5回「五月が一番夏らしい季節」より)。

オススメ記事

森博嗣

もり ひろし

1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部建築学科で研究をするかたわら、1996年に『すべてがFになる』で第1回「メフィスト賞」を受賞し、衝撃の作家デビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか、「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、また『The cream of the notes』シリーズ(講談社文庫)、『小説家という職業』(集英社新書)、『科学的とはどういう意味か』(新潮新書)、『孤独の価値』(幻冬舎新書)、『道なき未知』(小社刊)などのエッセィを多数刊行している。

 

この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

静かに生きて考える
静かに生きて考える
  • 森博嗣
  • 2024.01.17
歌の終わりは海 Song End Sea (講談社文庫 も 28-86)
歌の終わりは海 Song End Sea (講談社文庫 も 28-86)
  • 森 博嗣
  • 2024.07.12
道なき未知 (ワニ文庫)
道なき未知 (ワニ文庫)
  • 博嗣, 森
  • 2019.04.22