石丸伸二や米山隆一への誹謗中傷とは? 「悪党」をキャンセルするための差別ならOK⁈【仲正昌樹】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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石丸伸二や米山隆一への誹謗中傷とは? 「悪党」をキャンセルするための差別ならOK⁈【仲正昌樹】

「悪党」退治のためのダシとして差別される人たち

カマラ・ハリス

 

◾️他人を批判する時に、別の人間で例えるという無自覚な罪

 

 アメリカ大統領選で、共和党の副大統領候補のヴァンス氏が、民主党のハリス副大統領のインタビューの受け答えを揶揄するため、二〇〇七年のミスコンの出場者の受け答えのビデオをxでの投稿に添付したところ、当時悩んで自殺しようとまで思いつめたという当該女性の抗議を受けて、投稿を削除するという事態があった。揶揄のイメージとして使われている女性が、生身の人間であり、有権者であるということが想像できなかったのである。

 他人を批判する時に、別の人間で例えるということを私たちはしょっちゅうやっている。不注意で、揶揄すべきでない生身の人間を引き合いに出してしまうこともある。人間は完璧ではないので、そういう失態が起こるのはある意味致し方ないことだ。やってしまったら、謝罪するしかない。

 しかし。いろんなイメージが物凄い勢いで増殖・流通し、多くの人がそれをリポストや引用の形で、無造作に利用しているネット社会では、他人を別の人を叩くネタにすることの罪悪感が薄れがちだ。本人を直接見たことがなくても、ネット上のイメージとしてしょっちゅう遭遇しているので、分かった気になれるからだ。ネット上のイメージは、引き合いに出されることに抵抗しない。そのため、ほとんどの場合、罪悪感を覚えないですむ。

 政治家、ジャーナリスト、反差別闘争(をやっているつもり)の人など、無自覚の差別に最も注意すべき人たちまでが、イメージによる無自覚の差別に染まっている。

 

文:仲正昌樹

 

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仲正 昌樹

なかまさ まさき

1963年、広島県生まれ。東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了(学術博士)。現在、金沢大学法学類教授。専門は、法哲学、政治思想史、ドイツ文学。古典を最も分かりやすく読み解くことで定評がある。また、近年は『Pure Nation』(あごうさとし構成・演出)でドラマトゥルクを担当し、自ら役者を演じるなど、現代思想の芸術への応用の試みにも関わっている。最近の主な著書に、『現代哲学の最前線』『悪と全体主義——ハンナ・アーレントから考える』(NHK出版新書)、『ヘーゲルを超えるヘーゲル』『ハイデガー哲学入門——『存在と時間』を読む』(講談社現代新書)、『現代思想の名著30』(ちくま新書)、『マルクス入門講義』『ドゥルーズ+ガタリ〈アンチ・オイディプス〉入門講義』『ハンナ・アーレント「人間の条件」入門講義』(作品社)、『思想家ドラッカーを読む——リベラルと保守のあいだで』(NTT出版)ほか多数。

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