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タリバン(アフガニスタン・イスラーム首長国)のカーリー・ディーン・ムハンマド経済大臣に単独インタビュー「アフガンは米国と中国、どちらを選ぶか?」

アフガニスタン経済省(2024年8月撮影)

 

―― エネルギー供給についてはどう考えますか?

 

 電力の発電にも力を入れています。風力や太陽光を活用し、7万キロワットレベルでの発電能力を確保することができました。しかし、それではアフガニスタンの電力需要には追いつかず、現在、タジキスタンやウズベキスタン、トルクメニスタン、イランなどの隣国から電力を購入しており、その費用は3億8000万ドルにものぼっています。

 前政権時代からあった発電所の発電量を倍増させたほか、太陽光や風力発電所を活用して、発電量を増やしています。現在もいくつかの発電所の建設の計画があり、着実に進んでいます。

 

―― 食料事情についてはどう考えますか?

 

 アフガニスタンは650万トンの食料が必要ですが、アフガニスタン国内で現在、生産できているのは僅か400万トンです。250万トンが足りない計算です。しかし現在、150万トンを増産させる計画があります。

 アフガニスタンには現在、54の食料貯蔵庫があります。そのうち、20の施設が政府の所有物です。しかしながら、政府所有の食料貯蔵庫のうち、14施設が稼働停止中になっています。そのため、食料貯蔵庫を再稼働させるための予算を編成し、再稼働に向けて計画を進めています。

 食料の安定輸送に向けた、高速道路網の整備の計画もあります。カブールからカンダハルを結ぶ高速道路や、カブールからヘラートを結ぶ高速道路などの整備を通して、国内での雇用を生むと共に、安定した交通網の整備を着実に進めていく計画です。

 

 

――スズキのパキスタン子会社のパックスズキモーターは今年8月、アフガニスタンに向けて自動車の輸出を開始すると明らかにしました。日本の自動車メーカーがアフガニスタンに向けて自動車の輸出を開始することについて、どのように考えますか?

 

 日本の自動車メーカーがアフガニスタンに対して自動車を輸出するというニュースを歓迎しています。アフガニスタンは過去30年間の争いで、工業などの分野について、深刻な影響を受けました。工業生産に関する技術の蓄積が失われてしまったなかで、工業の復興にも力を入れています。

 

―― アフガニスタン国内では、工業力に課題があると考えます。この点をどう再建しますか?

 

 先週(取材時)、カンダハルにある織物業の企業を視察しました。かつては工場の生産設備などに深刻な影響がありましたが、現在では完全に復興され、操業を続けています。

 また、ヘルマンドにある綿実油の精製業者も視察しました。綿の種子を原料に油を精製している企業です。これ以外にも、数多くの企業や産業が、アフガニスタン国内では復興に向かっており、アフガニスタン経済を支えているのです。

 

―― 交通網の整備というのが、人の移動の面でも、物流の面でも重要と考えます。交通網の整備に関して、計画はありますか?

 

 アフガニスタンにはかつて、鉄道網が整備されていました。しかし、米国との間の争いなどがあり、鉄道網は完璧に破壊されてしまいました。現在はまだ計画段階ですが、ウズベキスタンの鉄道事業者と協働して、鉄道を敷設する計画があります。

 しかしながら、現在はまだ計画段階であり、遺憾ながら資金面からも、世界銀行やアジア開発銀行などの協力なしには実現できないと考えています。

 アフガニスタン国内の自動車運用のルール設定にも課題が残っています。日本やイギリスのように、右ハンドルの車もあれば、米国のように、左ハンドルの車もあります。アフガニスタン国内では、右ハンドルの自動車と左ハンドルの自動車が混在していることにより、頻繁に交通事故が発生しています。こうした事態を防ぐため、ハンドルの位置の統一を考えています。

 日本の自動車業者がアフガニスタンに対し、自動車を輸出してくれることは非常に助かるので、ハンドルの位置の問題や輸入手続きなどについてもできる限りの便宜をはかっていく方針です。

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田代秀都

たしろ ひでと

ジャーナリスト

2001年神奈川県生まれ。大学在学中より、中東地域を精力的に取材。これまで、シリアやイラク、レバノン、アフガニスタンなどの国を取材・各種週刊誌などで発表。

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