かつてネットの人気者だった石破茂が「中国・反日勢力のスパイ」とネトウヨに嫌われるまで【篁五郎】
■石破が嫌われるたった一つの理由「神との対立」
それは「安倍晋三と対立したから」に他ならない。
安倍晋三と言えば、ネトウヨから見れば神のような存在であった。安倍の発言や行動には全て賛成しなければならない。ひとたび安倍を批判すれば「反国家主義」「サヨク」「共産主義」とレッテルを張りつけて攻撃される。
反対に彼を持ち上げる言論人は賛美される。難しいことはない、安倍や安倍の盟友・麻生太郎と一緒に写真を撮影し、SNSにアップすれば「保守主義者」「真の愛国者」の誕生である。はたから見たら異様な世界だが、これが通常運転なのだ。
神である安倍が間違えるはずがない――。彼らはこの思い込みで生きている。森友学園問題で、近畿財務局のノンキャリアの職員だった赤木俊夫さんが自裁した時も、彼の死を嘆いた者は一人もいなかった。それどころか、安倍批判の急先鋒である立憲民主党の杉尾秀哉や小西洋之のせいにするデマに乗っかっていた。
ネトウヨが石破を攻撃する理由は他にない。「自民党内で安倍を正面から批判する石破が憎い」それだけのことだ。
安倍と石破は最初から反目し合っていたわけではない。政権復帰した2012年に、当時総裁だった安倍は石破を党のナンバー2である幹事長に就任させている。当時の安倍・石破体制の自民党に揉め事はなかった。
二人の間に亀裂が入ったのは2014年。安倍が内閣改造で石破に入閣を要請してからだ。石破はそれを固辞し、幹事長留任を求めた。安倍はこの頃から石破に対して警戒感を抱き、ネトウヨ言論人もそれに同調していった。
安倍が自民党内で権力を完全に掌握すると、対立の色が濃くなっていく。森友学園問題での安倍内閣の対応に対して、石破が真っ向から批判。2017年には以下の発言をしている。
「国有地は国民の財産で、不当に誰かの利得になっていいはずはない。野党に言われるまでもなく、政府・与党として解明すべきものだ」
財務省の決裁文書改ざんが明らかになり、自殺した赤木俊夫さんの手記が公表された際も安倍の対応を批判し、以下のような発言をした。
「政府は、再調査はやらないというなら手記に新しい事実はないと明確にすることが必要だ」
当時の安倍内閣は森友学園問題に関して「知らぬ存ぜぬ」を貫き、再調査の約束をしなかった。この頃からネトウヨ言論人が「後ろから味方を撃つ奴」と言うようになった。その犬笛に乗っかり、ネトウヨも同じ論調で石破を叩いたのである。