かつてネットの人気者だった石破茂が「中国・反日勢力のスパイ」とネトウヨに嫌われるまで【篁五郎】
■2018年総裁選で安倍と石破の対立が決定的に
安倍と石破の仲が決定的にこじれたのが2018年の自民党総裁選。
三選を目指す安倍に対し、石破は、森友・加計問題を念頭に「正直」「公正」をスローガンに掲げた。この時、石破を苦々しく思っていたのが安倍である。石破を敵視し、徹底的に石破派を殲滅しようとした。
証拠は『安倍晋三回顧録』(中央公論新社)にある。安倍は総裁選を「野党と戦っているよう」と表現したのだ。
「野党と戦っている気分でしたね。私が弱っている時には、ここぞとばかりに襲いかかってくるなあと思いました」
総裁選で勝利した安倍は、石破派を壊滅させるべく派内の分断へと動いた。派閥のホープである山下貴司を法相に一本釣りしたのだ。その経過も同『安倍晋三回顧録』に書いてある。
「総裁選で石破さんは、日露交渉について『経済協力をしたから、領土問題が前進するとは思わない』と言い、日朝関係に関しては『平壌に連絡事務所を開設する』と打ち出していました。あまりにも私と考え方が違ったので、それならば石破派からは一本釣りして驚かせてやろう、と考えたのです。(中略)内閣改造の直前、彼には『君の名前が表に出たらつぶされるから、絶対に口外するな。石破さんにも言ってはいけない』と伝えたのです」
その後も安倍は石破派を壊滅させるべく、同派の齋藤健を入閣させた。齋藤も山下同様、石破派を退会。安倍の思惑通り石破派は事実上消滅したのである。