「1.5軍」オールブラックスに惨敗、ラグビー日本代表に忍び寄る冬。熱狂は冷めていってしまうのか?
▲オールブラックスに大敗したラグビー日本代表
10月26日、横浜・日産スタジアム。エディー・ジョーンズHC率いるラグビー日本代表は、世界最強と呼ばれるニュージーランド代表(オールブラックス)と対戦し、19-64で大敗を喫した。この日のオールブラックスはバレット3兄弟をはじめ主力を欠く、いわば1.5軍のメンバー構成だったという。それでも圧倒的な力の差を見せつけられる結果となった。
「序盤の攻撃は冴えていたのですが…」と語るのは、さるスポーツメディアの編集者。
「試合開始わずか5分でナイカブラ選手がDFを突破し先制トライ、立川選手のコンバージョンで7-0と理想的な立ち上がりでした。その後もマキシ選手もトライをあげ、12-14に。いずれのトライも攻撃の起点となる藤原選手のクイックパスから生まれ、エディーHCが掲げる『超速ラグビー』の片鱗が見えました」
しかし、その後は一方的な展開となった。
「前半だけで7つのトライを奪われ、12-43。後半も攻守の差は歴然で、19-64という大差の敗戦となりました。オールブラックスとは2年前にも日本で戦い、その際は31-38と7点差まで肉薄しましたが、また遠くに行ってしまいました」
6万人を超える観客だったが、現地での視点から“熱狂”はモザイク模様だったようだ。
「もちろん6万人は素晴らしい数字でしょう。6月のイングランド戦で問題となった『ダイナミックプライシング』(需要に応じて価格が変動する仕組み)も改善されたようです。しかし、この日産スタジアムは2019年のラグビーワールドカップ決勝で7万人を集め、また2022年に国立競技場で行われた日本対オールブラックス戦でも6万5千人を動員しています。今回、メインスタンドは埋まったものの、角席には空席がチラホラあったんです。その空席に2019年W杯からのラグビー熱の落ち着きを見たような気がしました」
日本代表は今、世代交代の真っただ中にある。この日も、エディーHCが高く評価する20歳の現役大学生FB矢崎選手がフル出場。独走しかける場面もあったが、トライには至らず、守備面での課題も浮き彫りになった。
「若手の起用は必要です。しかし、代表戦で戦えるレベルに達していない選手を続けて起用すれば、こうした大敗は避けられません。ポテンシャルは十分ですが、準代表であるジャパンフィフティーンなどでまず経験を積ませるべきです」
この後、日本代表にはフランス、イングランドとの激戦が待っている。6月のイングランド戦(10-52)、今回のオールブラックス戦と、強豪国との対戦で大敗を喫している。「正直に言って、現状の日本代表には厳しい戦いが続くでしょう」と言う。
「イングランドには今年既に大敗を喫し、フランスはさらに上位に位置する強豪です。今は『超速』や『若手育成』という理想を追い求めるよりも、まずは結果と爪痕を残すことが先決ではないでしょうか。極端な話、外国人選手も10人ぐらい入れていいと思います(笑)。フォワード陣にベテランを緊急招集してもいい。とにかくなりふり構わずいってほしい。このまま惨敗続きとなれば、2019年W杯からのラクビー熱が一気に“冷えて”いってしまうことも考えられます。同じ球技で言えばサッカー日本代表が絶好調ですし、バスケットボールも人気が高まっています。とにかく日本人は熱しやすく、冷めやすいですからね」
その言葉は危機感に満ちていた。