ポジティブ手抜きを実践するための極意
誰もが感心するポジティブな手抜きには、これさえ意識すれば大丈夫!
その3 自分の「型」を決めて落とし込む
自分の型を持つとは、言葉を換えれば「自分なりの基準を持つこと」とも言えます。
例えば打ち合わせの前にA4サイズ1枚の企画書を書くことになったとします。そのとき、文章を書く能力という部分で自分の基準を持っている人は、「30分で書けるから、今すぐ書けば午後のアポイント前に提出できる」といった段取りが頭に浮かんできます。
もちろんそうした自分基準を持つためには、ある程度の積み重ねが必要になります。
その「型」が「自分の基準」であり自分の企画書を書くときの自分のフォーマットとなるのです。その「型」「基準」が自分のなかで、実際に使えるものさしになるまでは、とにかく集中して練習に取り組みます。そのときも企画書なら企画書に限定して、あれこれ他の書類には手を広げないことがポイントです。
その4 野生の感覚で行動する
仕事における野生感覚とは、その場の状況に合わせて臨機応変に対応する姿勢であり、能力なのです。
しかし現代では、多くの人が何事においても慎重になりすぎて、自分の感覚でそのつど状況に応じた判断をすることができなくなっているように思います。それが「言われたことだけをやる。言われなければ動かない」という消極的な姿勢につながってしまっているのではないでしょうか。既存のシステムに乗っかって、「とりあえずこなす」という臆病なスタンスでしか物事に臨めない人が、実はかなり増えている気がするのです。
例えばサバンナにいるシマウマが、遠くにライオンやヒョウの姿を見つけたら、危険を察知してすぐに逃げるでしょう。このときに「群れのリーダーが『逃げろ』って言わないから動かない」「逃げろって言われたら逃げよう」などと考えているシマウマはいません。
極端な例を挙げましたが、指示待ち人間の行動とは、突き詰めればこういうことなんです。普通の野生動物ならば本能で動くこと、命令されなくてもやるようなことをやらずに傍観してしまうのは避けましょう。
その5 「逆算」と「段取り」の習慣をつける
ゴールから手順を逆算すると、プロセスで不要なものが徹底的に省略できます。
例えば「娯楽映画の巨匠」と呼ばれた映画監督のマキノ雅弘監督は非常に合理的な発想の持ち主だったといいます。竹林で刀を抜いての大立ち回りシーンを撮影したとき、どこかから竹をたくさん持ってきて竹林のセットをつくったのだけれど、竹林には見えない。
いざ撮影になると、マキノ監督は「みんな、こういうつもりでこっちからカーッと刀抜いて、その竹林のあいだのところへ行ってくれ。その次はひっくり返って、そのずっと向こうへ!」と「なんか辻褄の合わんこと」を言う。ところが、小さな竹林のセットの中を役者に走り回らせ、そのたびに竹の位置を置き換えて何度も撮影することで、いかにも本物の広大な竹林で撮ったかのような臨場感のあるシーンを撮影してしまうのでした。
マキノ監督の仕事の仕方(映画の撮り方)は、数字の計算こそ出てきませんが「逆算」の発想でもあります。本物の竹林でのロケができなくても、スタジオでそれに劣らないシーンを撮影してしまう合理的なアイデアは、彼の徹底した逆算と段取りから生まれたものだと言えるでしょう。自分が撮りたいシーンが明確だから、いま撮るべきもの、撮らなくていいものがわかる。ゴールから手順を逆算するから、プロセスで不要なものが徹底的に省略できるのです。
<『手抜き力』より抜粋>
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