Scene.41 本屋に、来てくれてありがとう!
高円寺文庫センター物語㊶
「あれ、石原さん。
サイン会に並んでって、ありがとうございます!」
清志郎さんと出逢えるキッカケを作ってくれた、ボクら的にリスペクトしてやまない編集者。そういえば、スポーツなどと個人的な話をしてなかった・・・・清純さんとは編集者としての繋がりがあったのかな、等と考えていたら。
「店長。
スポーツ・ライターは文庫センターに、どうかなって思ったけど連日の雨模様でも人出は良かったじゃないですか!
明日の遠藤ミチロウサイン会には、来れるかどうか微妙なんだけど、頑張ってね」
石原さんはクールにカッコよく去って行く。清純さんの、サイン会スタイルもクールビューティ!
ところが、この年は気候までがクール!
5月は中旬から、雨、曇天、雨、曇天。漱石的なロンドン曇天より、能天気なピーカン西海岸っていうのがいい。
梅雨明けが例年より12日も遅れたこの年、晴れ男店長の沽券にかかわる二連ちゃんサイン会はぐずついた空模様。
ミチロウさんとの待ち合わせ&サイン会の打ち合わせ、南口駅前「トリアノン」での脱線トークは例によって自粛、自粛!
イベントを引き受けてご来店してくださった、漫画家さんやミュージシャンに作家さんなどと、みなさん心優しい方ばかりで嫌な思いというのをしたことがない。名声を得ても驕ることのない方々ばかりなので、素敵なエピソードは書き綴りたいところだが。自粛!
ボクらのノリが良すぎるのか、瞬く間に胸襟を開いての本音トークが炸裂となるので、一部の方のトークは自粛せざるを得なかった。だって、その方のイメージにかかわるでしょう?!
そんな素敵すぎるキャラの遠藤ミチロウさん。文庫センターで二回目のサイン会は、新刊『嫌ダッと言っても愛してやるさ!』。60人を超えるお客さんが、来てくれた。
「店長、知っとうや?!
南口の湘南堂本店さんが、店閉めるっちゅう話ばい!」
「ゲゲ!
湘南堂さんの北口店が閉店になって、間もなかけん!」
「友達のキンちゃん、バイトなくなってしもうたけんが。
高円寺の老舗書店がアウトって、店長。街の本屋はどぎゃんなると!」
「内山くん。湘南堂さんと言えば日書連っつって、日本書店商業組合連合会、要は本屋のおやっさん達の組合みたいなもんなやけどな。
そぎゃん会長職ば務めるほどの、老舗が店じまいは信じがたいばい!」
「おう、聞こえたぞ!
小零細書店は消費低迷の不況による廃業、中規模老舗書店は加えて全国規模の大手書店の地域進出でポアだそうだな。おまえら、大丈夫か?!」
「木田さん、さすがに勉強されたようで本屋事情に詳しい!」
「ばーか!
これまで、いちいち店長が講釈垂れるからだろ。はっきり言っておくがな、街の本屋を蔑ろにする国は文化水準ない!
俺の実家がある地方都市でも、地域の文化の中心を担っていた老舗書店が苦境に立たされたり廃業したりだ。不況に加えて、大手書店が次々と出店してくるからだ!」
「大都市圏だって、それらに加えて娯楽の多様化もあるから、本や雑誌が読まれなくなっているじゃないですか。
機械化合理化もできない本屋の防衛策は、出費の基幹となる人件費の軽減策ですか らね。給料の削減や希望退職勧告などに、経営者と闘うか、やる気の喪失で辞めていくか」
「だから、7・80年代の神保町交差点付近は赤旗が林立して翻っていたんだろ。
担当売り場面積が増やされたり、売上のノルマ達成を課されるなんて聞いたら本屋文化なんて無理だな!」
「それに、小零細の街の本屋のオヤジさん達も変わらないんですよ。
気苦労の連続で身体は壊す。そんな姿を見て、跡取りは家業放棄で廃業なんてケースもご存知でしょ?!」
「最後に行っておくぞ!
おまえらみたいに、挑戦するヤツは好きだ! その魂が好きだ。一回ぽっきりの命、使い切れよ。ひとの評価とか気にするな・・・・見てるひとは見てる。
道徳なんて、権力者が秩序と保身のために作り出すものにすぎない。悪とは正義の変装であって一つの社会の正義はもう一つの社会の悪なのだ。by 寺山修司
世話になったな!」