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ものを作ることがデフォルト【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第33回

森博嗣 新連載エッセィ「日常のフローチャート Daily Flowchart」連載第33回

 

【まだ生きているなあ、と毎日思う】

 

 相変わらず、落葉掃除に明け暮れている。だいたい達成率は80%くらい。肉体疲労が蓄積し、筋肉痛が方々にある。それでも、風が良いというだけで、今がチャンスとばかりに頑張ってしまう。何が得られるというわけでもない。誰も褒めてくれない。完全な自己満足なのに、これが自分の使命だといわんばかりの奮闘は、実に不可思議である。

 既に朝は氷点下で、風が吹いている日は、朝一番の犬の散歩が過酷だ。南極観測隊に任命されたと思って遂行しているのだが、犬は寒いほど元気で、故郷のシェトランド島を思い出しているのだろう。ただ、寒くなると空気が澄み、遠くまで見通せるようになる。なだらかな丘陵地のカラフルさと、霜で真っ白になった大地が、いずれも輝かしい。

 この世のものとは思えないほど綺麗だ、という常套句を思いつくけれど、そんなに「この世」は汚いのだろうか?

 

僕が担当している犬は、体重が24kgもあり、覚悟がないと抱っこができない。誰に似たのかオタク気質で、自分の趣味に生きている様子である。本人が興味を示すものを持っていれば、顔を上げて見つめる真剣な顔が撮影できる。

 

文:森博嗣

 

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静かに生きて考える   Thinking in Calm Life

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森博嗣先生のBEST T!MES連載「静かに生きて考える」が書籍化され、2024年1月17日に発売決定。第1回〜第35回までの原稿(2022.4〜2023.9配信、現在非公開)に、新たに第36回〜第40回の非公開原稿が加わります。

 

 

 世の中はますます騒々しく、人々はいっそう浮き足立ってきた・・・そんなやかましい時代を、静かに生きるにはどうすればいいのか? 人生を幸せに生きるとはどういうことか?

 森博嗣先生が自身の日常を観察し、思索しつづけた極上のエッセィ。「書くこと・作ること・生きること」の本質を綴り、不可解な時代を見極める智恵を指南。他者と競わず戦わず、孤独と自由を楽しむヒントに溢れた書です。

 〈無駄だ、贅沢だ、というのなら、生きていること自体が無駄で贅沢な状況といえるだろう。人間は何故生きているのか、と問われれば、僕は「生きるのが趣味です」と答えるのが適切だと考えている。趣味は無駄で贅沢なものなのだから、辻褄が合っている。〉(第5回「五月が一番夏らしい季節」より)。

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森博嗣

もり ひろし

1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部建築学科で研究をするかたわら、1996年に『すべてがFになる』で第1回「メフィスト賞」を受賞し、衝撃の作家デビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか、「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、また『The cream of the notes』シリーズ(講談社文庫)、『小説家という職業』(集英社新書)、『科学的とはどういう意味か』(新潮新書)、『孤独の価値』(幻冬舎新書)、『道なき未知』(小社刊)などのエッセィを多数刊行している。

 

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