いまさら聞けないサッカーの大ギモン
「なんなの!? “オフサイド”って!」
初心者がサッカー観戦を100倍楽しむために。3分で「目利き」になる観方
オフサイドはサッカーを「結果」ではなく「過程」を楽しむスポーツに変えた
「サッカーってオフサイドがあるから、難しくてよくわかんない!」
昔からよく耳にする、不満の1つですよね。パスを出した瞬間、相手ディフェンスラインの最後尾よりも前へ出ている選手は、オフサイドの反則を取られます。「手を使わずにボールを相手ゴールに叩き込む」という単純明快なスポーツの中で、オフサイドは唯一とも言えるくらい複雑なルール。
これは相手ゴール前での「待ち伏せ」を禁止するためのルールなのですが、その歴史は意外にも古く、100年以上前から存在します。曰く、「待ち伏せ」してゴールを決めようなんて、フェアじゃない。
サッカーのもっとも大きな独自性は「中盤」だと思います。ゴール自体がすごく決まりにくいので、その過程を工夫しなければ得点を奪うことができません。昔、ルイ・コスタという元ポルトガル代表選手が「オフサイドのルールをなくせば、サッカーはより攻撃的でスリリングになる」と発言したことがありました。それは一面で事実でしょう。
オフサイドがなければ、わざわざ面倒くさい中盤なんて作らなくても、相手ゴール前で待ち伏せすればいいのです。間違いなくゴール前の攻防が増えるでしょう。その代わり、守備側はピッチ全体を守らなければならないので、ボールを奪うのが困難になり、ある程度はバスケットのように中盤を捨てざるを得ません。果たしてそれが“サッカー”なのでしょうか?
おそらくサッカーほど“勝ち方”にうるさい競技はないと思います。勝ったチームを「つまらない」とこき下ろす。そんなことは日常茶飯事。元バルセロナのシャビは、ガチガチの守備固めで勝とうとするチームに対し「アンチフットボール」という表現をよく使います。そこにはシャビならではの中盤の考え方、すなわちゲーム作りの哲学が表れており、「どう勝つか?」に対してみんながこだわりを持っています。それは“生き方”と表現しても過言ではない。
オフサイドというルールは、サッカーをスコアではなく過程を楽しむスポーツに変えた。僕はそう思っています。
(『3時間でサッカーの目利きになる』をもとに構成)