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【橋下徹撃破】「裁判費用に一千万かかった」スラップ訴訟に完全勝利した大石あきこ議員が激闘の約2年半を振り返る

大石議員を直撃!

■入念な準備をした証人尋問だったが、肩透かしをくらう

▲一審での証人尋問後に開いた記者会見での大石議員と弘中惇一郎弁護士と大前治弁護士

 大石・橋下裁判で一番の山場は、被告である大石議員が証人として出廷し、原告と被告双方から尋問を受けた法廷だろう。

 原告側(橋下氏)の主張の一つに、大石議員の発言は真実ではなく、「自分はメディアに対してアメもムチも使っていない」というものがある。

 しかし、被告側(大石議員)は「アメ」の実例を示した。MBS(毎日放送)で放映された「撃撮スクープ」という番組で、特別取材をさせたことが証人尋問で明らかにされたのだ。この証拠はいつ発見したのだろうか。

「日刊ゲンダイのインタビューを受けたときから(撃撮スクープを)念頭に入れてました。その番組からは『橋下徹に喧嘩を売った女性職員は今』みたいな感じで取材がきて、インタビューにも答えたんです。つまり私も出演者の一人です。自分が出ている番組なら見ますよね。だから最初から知ってて『アメとムチ』と言ったんです。

すぐに証拠提出しなかったのは、他のアメ(架空の利益)の立証を優先したかったことや、DVDを入手して、文字起こしして、私が言った『アメ』を証明するための論理展開や、番組内での映像、MBSと橋下さんがお互いに利益になるようなナアナアの部分をセレクトするのに時間がかかりました。

後は、私と弁護士さんとのすり合わせを丁寧にしたかったからです」

 証人尋問に臨むにあたり、大石議員側は入念な準備をしてきたという。前述の通り、橋下氏が起こした別の裁判で向こうのやり口を知っていたからだ。大阪府職員として証人尋問に出てきた彼女へ橋下氏は、「あなたは一般職員で行政の仕組みはわからないでしょ」と印象操作を仕掛けてきた。

 今回は橋下氏が自ら原告かつ弁護士として尋問してきた際のシミュレーションや、出てこなかったときの備えもしていたという。

「被告側の尋問で弘中弁護士が『大石さんが橋下さんを知事と呼んでいるのは元上司だからですよね』と聞いたんです。それは『知事と呼んでいるのに証拠には(大阪)市長時代のもあるじゃないか』と、向こうに揚げ足取りをさせないためでした」

 細部まで注意を払って対策したにも関わらず、橋下氏側代理人から出てきた質問は肩透かしを食らうほど稚拙なものばかり。それでも大石議員と弁護団は油断することなく裁判を進めていった。

「裁判って選挙と同じで、自分の手応えと結果が違うことが当たり前にあります。『勝てる』と思っていたら勘違いを起こしてしまうので、常にベストを尽くすしかないんです。

弁護士さんは非常に慎重で『こっちが有利ですね』とは言いません。私も聞かないようにしていました。でも、あの裁判に関しては『尋問に関してはこっちが押しましたね』という評価をもらっていたんです。それは『勝てるかも』というより『このままいこう』という感じです」

 控訴審判決も被告の勝利。原告側は上告することなく裁判は終結した。

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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