【橋下徹撃破】「裁判費用に一千万かかった」スラップ訴訟に完全勝利した大石あきこ議員が激闘の約2年半を振り返る
大石議員を直撃!
■「言論の自由を守る」「メディアの在り方を示す」と訴えた理由とは
大石議員と弁護団は「この裁判はメディアの姿勢も問われている」と言い続けてきた。しかし在阪メディアは、維新の会や橋下氏に対して、今でも及び腰である。東京も大して変わらない。安倍内閣、菅内閣の致命的な不祥事(森友学園問題に伴う財務省の公文書改ざん、安倍晋三総理の暴力団への選挙妨害依頼、東北新社接待問題、日本オリンピック委員会経理部長の謎の自殺等々)についておざなりな報道を繰り返してきた。
裁判の結果が出ても変わらぬ報道姿勢について思いを聞いてみる。
「この10年間ずっとそうですよね。私自身もそうですけど、広報のような報道に慣れてしまっている。私ももう半分諦めてしまっていた。でも、弁護士さんに『この裁判は、メディアにも言っているんだよ』と言ってくれたのはすごく救われた」
大石議員は橋下氏だけではなく、元TBSワシントン支局長・山口敬之氏からも名誉毀損で訴えられた(※2)。こちらの裁判も大石議員側が勝訴している。こうした「いわれなき訴訟」をストップさせる一つの方法として、「反スラップ訴訟法」制定を望む声が一部にはある。この法律について聞いてみる。
「反スラップ訴訟法は必要だと思います。でも、何でもかんでも適用すればいいとは思いません。『訴える権利』というのも保障されるべきですし、鋭い批評についての公益性も担保されるべきだからです。
私自身も国会議員になって、あらぬことを言われてきたことがあります。例えば、この間は政治資金収支報告書のミスを訂正した後の書類を出してきて、『裏金議員』なんてレッテル貼りもされました。ミスの修正と意図的に隠したのとでは、全く違うわけじゃないですか。しかも選挙前にデマが流されたので政治活動の妨げにもなりました。法的措置も検討したのですがやりませんでした。理由は、『裏金議員を追求していた議員が、もし裏金議員だったらどうするんだ?』という公益性の部分です。その論評は議員として許容しないとダメじゃないですか。でも、悪意をもってデマをぶつけてくる方もいるわけです。
私は3年間の議員活動を通して、国会議員という立場にある者が、法的措置を取れないのはおかしいと思いました。公益性が高い言論は謙虚に受け止めなければいけない。その辺りの兼ね合いは難しいですが」
■スラップ訴訟で言論封殺を仕掛ける輩へ
最後に大石議員、橋下氏のような“気に入らない相手へ訴訟を仄めかす不埒な輩”に背筋を正す一言をお願いしてみた。
「『ええ加減にせえ!』です。私の例で言いますと、かかった費用1000万円は、議員歳費の半年分です。私みたいに大胆な言論をしてくる人を潰すために裁判を起こそうってなれば、国会議員も一般の人も萎縮する金額ですよね。だから、『ええ加減にせえ!』なんです」
インタビュー中に印象的だったのは、しっかりと頷いて、こちらの言葉を遮ることなく耳を傾ける姿勢だ。言論において重要な「聞く力」を持っている方だと感じた。
そして自らの言葉で発信する力を持っている。しかしながら反発する人が多くいるのも事実である。「裏金議員」とデマが流されたのが証拠だ。
今は、SNSや動画を通じて誤情報を大量に流布させることが可能な時代。だからこそメディアは常に権力者や扇動者へ監視の目を向けるのが必要だろう。大石議員が記者会見で繰り返してきた「言論の自由を守る戦い」「メディアは権力を監視する役目を思い出してほしい」という訴えに耳を傾けるべきは、我々メディアはもちろん、すべての国民と言えるだろう。
※2:2019年12月、山口敬之氏が、フリージャーナリストの伊藤詩織氏に対して名誉毀損裁判を起こした際、大石氏は「伊藤詩織さんに対して計画的な強姦をおこなった」「1億円超のスラップ訴訟を伊藤さんに仕掛けた、とことんまで人を暴力で屈服させようという思い上がったクソ野郎」と山口氏を非難したことが名誉毀損だとして訴えられた。2024年3月、大石氏は高裁で逆転勝訴している。
取材・文:篁五郎