シュンペーターから学ぶ「日本経済の衰退や日本企業の没落」の原因とは【中野剛志】
必要なのは〝マルクス〟でなく〝シュンペーター〟
◾️「資本主義の不可避的な崩壊を予測」 したシュンペーター
ところで、資本主義の不可避的な崩壊を予測した『資本主義・社会主義・民主主義』に対しては、その出版当時から、これをシュンペーターの「敗北主義」だとして批判する声があったようです。そういう批判に対して、シュンペーターは、同書の第二版の序文において、猛然と反論しています。
敗北主義とは、行動との関連においてのみ意味をもつ一定の精神状態をいう。事実そのものやそれから導き出される結論は、たとえそれがいかなるものであろうとも、けっして敗北主義的でもその反対でもありえない。ある船が沈みつつあるとの報告は、けっして敗北主義的ではない。ただこの報告を受け取る人の精神のみが敗北主義的たりうるにすぎない。たとえば、船員はこの場合に座して酒を飲むこともできる。また船を救うべくポンプに突進することもできるのである。その報告がたんねんに実証されているにもかかわらず、ただ単にそれを否定するような人があれば、そのような人は逃避主義者である。
ここに、シュンペーターの精神の高貴さが表れていると思います。こういう台詞(せりふ)が言える人間に、是非ともなりたいものです。
文:中野剛志