酒井順子『老いを読む 老いを書く』 『楢山節考』のおりん婆さんの精神はいつまで続く【緒形圭子】
「視点が変わる読書」第16回 『老いを読む 老いを書く』 酒井順子 著
◆日本の高齢者が目標とする最終到達点を突き止めた!
数多の「老い本」を検証した結果、著者は日本の高齢者が目標とする最終到達点を突き止めた。それは、「ぴんぴんころり」。健康なままで過ごし、ある日「ころり」と死ぬことである。その理想的な末期を目指し、日本の高齢者は日々「老い本」を読みながら奮励努力しているのだ。
認知症、孤独、定年クライシス、老後資金、配偶者ロス……この本は暗く重いテーマを多く扱っているが、著者が書くと悲壮感がなく、まるで「老い」のテーマパークを巡るような感覚で読み進めることが出来た。
ただ一つ、最後に疑問が残った。
日本人の根幹とも言える「他人に迷惑をかけてはいけない」という尋常でなく強い意識は、この先永遠に存続するものなのだろうか。私にはまだその意識が残っているが、そのうちに「私が手をかけて育てたのだから、子供が私の老後の面倒をみて当然」「他人に迷惑をかけて何が悪い?」と思う人が大勢を占めるようになるかもしれない。
『家族に迷惑をかけたくないから、早く自分を山に連れて行け』
文:緒形圭子
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◎中瀬ゆかり氏 (新潮社出版部部長)
「刃物のような批評眼、圧死するほどの知の埋蔵量。
彼の登場は文壇的“事件"であり、圧倒的“天才"かつ“天災"であった。
これほどの『知の怪物』に伴走できたことは編集者人生の誉れである。」