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「和」と「心」という言葉は世界中で日本にしかない。それが意味するところとは

いま誇るべき日本人の精神 第8回

「日中友好」が熱心に唱えられていたあいだ、私はよく「中国人も同じ人間だから、心が通じ合うはずだ」と聞かされて、辟易したものだった。「心を通じる」とか、「心を分かち合う」という表現が、外国語にないことを知らないのだ。
 日本以外の国に、「和」は存在していない。日本では、心を分かち合っているからだ。
 世界は二十一世紀に入ったというのに、戦乱や、虐政が絶えることがない。
 世界平和は、日本の心と和の文化が、世界にひろまることによってのみ、もたらされることになろう。

 そのために、日本文化を世界にひろめるために、努力しなければならない。
私は海外を頻繁に訪れるうちに、日本民族の力の源が、いったいどこにあるのか、考えるようになった。
 日本について、驚くことが多い。
 日本では、古代から詩の形態が、まったく変わっていない。
 世界のなかで、日本だけ、詩の形式が古代から、少しも変わっていないのだ。
 英文学をはじめとする西洋文学では、近代詩と古代詩の形式が、まったく異なっている。
 日本でもっとも古い短歌といえば、『古事記』(七一二年)に素戔嗚尊(すさのおのみこと)の歌がでてくる。
 今日も、朝刊を手に取ると、読者からの短歌の投稿欄がある。
 短歌に関心がない読者は、みすごしてしまおうが、そこに載っている和歌は、素戔嗚尊の歌と、形式がかわっていないのだ。
 詩は人の心に、もっとも近い文学表現だ。
西洋では近代詩と古代詩との間に、長い時間的な隔たりがあるのに、日本では古代と現代が同じ時間にある。
 西洋や、中東でキリスト教の教会や、ユダヤ教の教会(シナゴーク)、イスラム教のモスクが新しく建てられる時には、近代建築様式をもって建てられる。古代の様式で建てることはない。
 日本では、近代都市に新しく神社が建てられる時でも、神代からの昔ながらの建築様式によって建てられる。それでなければ、私たちの心が和むことがない。

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加瀬 英明

かせ ひであき

1936年東京生まれ。外交評論家。慶應義塾大学、エール大学、コロンビア大学に学ぶ。「ブリタニカ国際大百科事典」初代編集長。1977年より福田・中曽根内閣で首相特別顧問を務めた。日本ペンクラブ理事、松下政経塾相談役などを歴任。著書に『イギリス 衰亡しない伝統国家』(講談社)、『天皇家の戦い』(新潮社)、『徳の国富論』(自由社)、『アメリカはいつまで超大国でいられるか』(祥伝社)、『中国人韓国人にはなぜ「心」がないのか』、『大東亜戦争で日本はいかに世界を変えたか』、『いま誇るべき日本人の精神』(ともにKKベストセラーズ)など。



 


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