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韓国戒厳令騒ぎの「滅亡と絶望」【佐藤健志】

佐藤健志の「令和の真相」53

韓国のユン・ソンニョル大統領は、非常戒厳を布告したもののすぐに解除、国民に謝罪した

 

◆保守が現状破壊をめざす理由

 保守主義とは、世の中のあり方をどんどん変えてゆこうとせず、従来の状態を維持するのが望ましいと見なす発想です。

 従来の状態はなじみ深いものなので、弊害があるとしても、どの程度のものなのか、どう対処すればいいのかなど、いろいろ見当がついている。

 ひきかえ物事をどんどん変えたら最後、どんな弊害が生じるか予想もつかず、お手上げになりやすい。

 だから、できるだけ現状維持で行けという次第。

 

 近代保守主義の祖と目されるイギリスの政治家・文人エドマンド・バークは、代表作『フランス革命の省察』でこう語りました。

 

 【国家のあり方を変えてはならぬと主張しているのではない。だとしても、あらゆる変更の目的は、これまで享受してきた幸福を今後も維持すること、すなわち保守に置かれるべきである。】

 【まずもって、よほど深刻な弊害が生じないかぎり、国体の変更に踏み切ってはならない。そして変更を行う際にも、「問題のない箇所はそのまま残す」という先達たちの手法を踏襲することが望ましい。】(『新訳 フランス革命の省察』、PHP文庫、2020年、378ページ)

 

佐藤健志編訳『[新訳]フランス革命の省察「保守主義の父」かく語りき』(PHP文庫)

 

 

 しかるにお立ち会い。

 バークの議論は、現在の世の中のあり方が、過去から受けつがれたものであることを前提にしている。

 現状は「原状(=過去の状態)」と、ほぼイコールなのです。

 産業革命前の世界では、そう見なしても差し支えなかったでしょう。

 

 けれども今や、物事はどんどん変わってゆくのが当たり前。

 世の中のあり方についても、変革のプレッシャーがたえずかかっている。

 この場合、現状は「原状」の否定の上にしか成り立ちません。

 

 そういう世界で、従来の状態を維持しようとすればどうなるか?

 現状維持ではダメです。

 ほかならぬ現状によって否定された、原状を回復しなければなりません。

 保守を達成するには、まず現状をぶち壊す必要があるのです!

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佐藤 健志

さとう けんじ

評論家・作家

 1966年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。

 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。

 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。

 主著に『感染の令和』(KKベストセラーズ)、『平和主義は貧困への道』(同)、『右の売国、左の亡国 2020sファイナルカット』(経営科学出版)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)など。共著に『新自由主義と脱成長をもうやめる』(東洋経済新報社)、『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』(VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。

 2019年いらい、経営科学出版でオンライン講座を制作・配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻、『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻、『佐藤健志の2025ニッポン終焉 新自由主義と主権喪失からの脱却』全3巻を経て、最新シリーズ『経世済民の作劇術』に至る。2021年〜2022年には、オンライン読書会『READ INTO GOLD〜黄金の知的体験』も同社により開催された。

 

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