「涙が出てしまうなあ……」監督の言葉にチームメイトが涙した理由
お笑い芸人・杉浦双亮の挑戦記〈30〉
愛媛マンダリンパイレーツの試合も残り1試合に……
■「涙」には独立リーグならではの理由がある
群馬が喜んでいる姿を脳裏に焼き付けようとする選手。すぐにダッグアウトへ引き上げる選手。涙を流す選手……。いろいろな思いが去来していたのだろう。
試合後、表彰式をすませるとチームのメンバーが最後のミーティングに顔を揃えた。ふだんであれば、加藤コーチ、荻原コーチそして弓岡監督が最後に話す、というのがお決まりだったけれど、この日は最初から監督が口を開いた。
「残念な結果になったけど、今年一年、まあようがんばった」
そういうと、続けてポツリと言った。
「涙がでてしまうなあ……」
監督の頬には涙が伝っていて、それを見てチームのメンバーも泣き始めた。一年間、チームを引っ張ってきたキャプテンの鶴田(都貴)。独立リーグのチームを束ねるというのは並大抵なことではない。ただのチームではなく、プロを目指すライバルでもあり、個々のレベルアップがもっとも大事だと思う選手もいる。「勝利を目指すために一致団結しよう」という言葉が簡単に通用する集団ではないのだ。
それは良い悪いではなくて、現実であり、夢を追うものたちの思いがあるからこそでもある。
その鶴田の涙は僕の心を打つものがあった。ほかにも中心メンバーだった白方(克弥)、四戸(洋明)、そして若い選手たちも泣いていた。
「もう、本当にこのメンバーと野球をすることができないんだな」
僕はそこで改めて実感した。
もしかしたら、なんで泣くの? と思う人もいるかもしれない。高校野球や大学野球のように卒業とともに引退、ということではないのだから、と。
でも、それは違う。独立リーグだからこそ、このメンバーは二度とないのだ。NPBを目指すなかで、選手は一年契約。これから契約更新の話になる。契約更新は嬉しいニュースだけれど、素直に喜べるものでもない。それはNPBには行けない、ということも同時に意味するからだ。
そんな状況だから、今年きりでNPBへの挑戦を諦める、と覚悟を決めてシーズンに臨んでいた選手がいれば、来年は違うチームでもっと違うアピールポイントを見出したいという選手もいる。だから来年のチームのメンバーはガラッと変わるだろう。
そういうわけで、たくさんの選手が流す涙は、本当にこのチームとはもう野球ができない、という思いからなのだ。
僕は最後に全員と握手をした。今年一年、「40歳のおっさん」を受け入れてくれてありがとう、という思いを伝えたかった。監督室に言って御礼を言うと「ようがんばってくれました」と言葉を掛けてもらった。
本当にいいチームメイト、指導者、球団に出会えたんだと改めて思い、最後に笑って終われなかったことがまた悔やまれた。
僕の挑戦はひとつの区切りを迎えたことになる。
来年どうなるか。それは球団の意志ももちろんだし、僕自身もたくさん考えなければいけないことがある。また、報告をしたい。
とにかく、本当にみなさん、今年一年ありがとうございました!
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