アドラー心理学が教えてくれる、「自分が嫌い」をやめる方法【梁木みのり】
担当編集者書き下ろしコラム
■「自分を好きにならない」という決心を解除する
根本的な解決方法は、この決心を“解除”することだ。
ではどうやって解除するのか。まずは、自分を嫌うための捉え方や、意味づけ(「ライフスタイル」と呼ぶ)を「自分で選んだ」ということに気づく。次に、他のライフスタイルがあるということを知る。今の生き方だけでなく、自分を好きでいる生き方もあり、それも自分で選べるのだと確信することが鍵なのだ。
本書の第二章では「他の人からの評価にとらわれない」「そのままのあなたでいい」などと題して、嫌いだった要素を持ったままでも自分を好きになる方法を伝えている。言葉だけで変われるなら苦労はないので、綺麗事ではなく実際の生き方に落とし込めるように、アドラー心理学に則って丁寧に解説している。本当にそのままの自分でいいのか? という疑問にも向き合って考えるし、他人からの評価という面では、実は「褒め言葉も毒になる」という事実にも斬り込む。
第三章では他の人との向き合い方、第四章では「老い・病気・死」といった避けがたい課題との向き合い方を解説し、人生を通して幸福な生き方を追求できるような一冊になっている。老いも若きも、いつ読んでも遅くないし、いつ読んでも早くない。
他の人との向き合い方の中でもとくにフィーチャーされるのが、恋愛と結婚だ。晩婚化、離婚率の上昇、出生率の低下を語るまでもなく、昨今の日本人は恋愛と結婚から離れ、シングルという生き方が一般的になっている。それ自体は悪いことではないが、一方でそれらは日本人が他者とうまく向き合えなくなった結果だとも思う。いざ結婚しても問題は絶えず、SNSを開けば、配偶者に対するバリエーション豊かな呪詛が毎日のように流れてくる。