アドラー心理学が教えてくれる、「自分が嫌い」をやめる方法【梁木みのり】
担当編集者書き下ろしコラム
■仕事、交友、愛の順で難易度が上がる
アドラーは、「仕事の課題・交友の課題・愛の課題」の三つをまとめて「人生の課題」と呼び、仕事、交友、愛の順で難易度が上がるとしている。ということは、仕事では優秀な人であっても、恋愛や夫婦関係では簡単につまずいてしまう可能性がある。そんな難しい課題に、どう向き合えばいいのだろうか。
本書では、アドラーのこんな言葉が紹介されている。
「愛と結婚の問題は、完全な平等にもとづく時にだけ、満足に解決できる」
「もしも男性か女性のどちらかが、結婚した後に、相手を征服したいと望むのであれば、結果は致命的なものになるだろう」
他にも、こんな言葉が。
「適当ないい訳もなく、デートに遅れる恋人を信じてはならない」
まるで現代のアドバイスのようだが、約100年前の心理学者の言葉だ。
本書では結婚する準備ができていない人として、「子どもが生まれることを怖れる人」「生まれてくる子どもをペットのように思い、ただ自分の楽しみのために子どもを産みたいという人」「友だちがいなかったり、友だちとうまく交わらない人」「仕事を選ぶのが遅い人」などをバッサバッサと斬っている。今結婚を考えている人は、自分やパートナーに当てはまっていないだろうか。
「二人のうちの一人が、相手をいつも教育したいと思ったり、いつも批判ばかりしているということも、結婚への準備ができていないことの印」ともアドラーは語る。とにかく重要なのは、二人が対等であることだ。
もし結婚前の関係や夫婦生活に暗雲が現れたら、本書を開いて、どうするべきかを考えるヒントにしてほしい。
この他、口出しの多い親との距離の取り方や、退職後に老害にならないための考え方、不治の病気にかかってしまったらどうするか? など、人生のあらゆるシーンで現れる、感情の整理が難しい問題に向き合っていく。アドラー心理学は、決してお堅い学問ではなく、誰の人生にも活かせる極めて実践的なものだということを知っていただけるかと思う。
自分が嫌い、だけど好きになりたい。今は不幸だと思っている、でも本当は幸福になりたい。そんな人にこの本が届いてくれればと願っている。