文化系クルマ好きの教科書『NAVI』【新保信長】新連載「体験的雑誌クロニクル」6冊目
新保信長「体験的雑誌クロニクル」5冊目
1995年から97年にかけて『PENTHOUS JAPAN』(ぶんか社)で新車紹介ページを担当したが、そこにも『NAVI』の影響が露骨に出ている。写真のテイストも似ていたし、〈速けりゃいいってものかもしれない。〉(スカイラインGT–R)、〈「これでいいや」と思える幸せ。〉(オペル・ヴィータ)、〈カッコイイとは、こういうことか。〉(三菱エクリプス)、〈インテリの自己主張。〉(ホンダ・プレリュード)、〈殿様のスポーツ〉(メルセデスベンツSLK230)といった見出しの立て方は、完全にパクリと言っていい。
1台のクルマに3人の自動車評論家からコメントをもらって一本の原稿にまとめるという、なかなか手間のかかることをやっていたのだが、そのコメンテーターの常連が前出の下野康史氏であった。『NAVI』で下野氏の文章はずっと読んでいて、柔軟な視点と軽妙な筆致が好きだったので、クルマページをやることになったとき、真っ先にコンタクトを取った。同じく『NAVI』出身の小沢コージ氏にも何度かコメントをもらった。当時はあまり意識していなかったが、要するに『NAVI』っぽい感じにしたかったのだろう。
冒頭で紹介した『クラクション』の表紙には〈Honk the Klaxon! to the times.〉というキャッチフレーズ添えられている。日本語にすれば「時代に警笛を鳴らせ!」。鈴木正文氏の発案らしいが、それはまさしく『NAVI』が実践してきたことだ。巻末の編集長からのあいさつには〈NAVIを愛するたくさんの人の想いから始まった、このクラクションを鳴らし続けていかなければ、という、ちょっとした義務感のようなものも生まれた〉と記されている。願わくば、新時代の『NAVI』として2号目以降も継続刊行されますように。
文:新保信長