ノーベル賞の選考過程は50年間ブラックボックス
サイエンス作家・竹内薫のノーベル賞プレイバック講義【第一回】
先日ボブ・ディラン氏のノーベル文学賞受賞が話題になりましたが、ノーベル賞ってそもそもどういう基準で選ばれているの? 実際に選ばれるのはどういう人? いまさら聞けない、ノーベル賞きほんの「き」をサイエンス作家・竹内薫さんがやさしく解説します。
ノーベル賞をとるのは「運がいい」から?
今年、オートファジー研究で受賞した大隅(良典)先生は「ノーベル賞は格別」とおっしゃっていましたが、もちろんそれは科学者にとって格別なものです。ただ、ノーベル賞をとった研究とそうでない研究にそんなに差があるかといわれれば、答えは「ノー」です。
これにはノーベル賞ならではの事情があります。受賞基準に対して実際の受賞人数には限りがあるということです。ノーベル賞って「希少価値」が売り物なんですけど、その「希少価値」に値する研究をした研究者を全部拾えば、一つの分野で毎年30人はいるんです。でも、例えばノーベル物理学賞は一度に3人までしかとれないですよね。実際その時にとった3人ととらなかった27人。彼らの間に研究のレベルに差があったのかというとそうではないんです。
ある意味ノーベル賞をとった人は「運がいい人」。実際にとれるかはノーベル賞の選考委員会の選考委員たちがどういう人かによって左右されます。いくらすごい研究をやっていても、結局死ぬまでノーベル賞をもらえない人は大勢いる。でも科学者のサークルの中では、別にその人の研究が劣っていたわけでもなんでもない。
いま世界にいい研究をしている人が100人いるとして、そのうちの本当に「運がいい」10人がとる、というイメージです。その10人がだれになるかというのは実は誰にも分からない。ただし、矛盾するようですが、その中にも別格の人たちが存在して、「この3人は誰がどう考えてもとるでしょ」という人もいるのです。
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