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「何の役にも立たない」ニュートリノ研究の凄さとは?

サイエンス作家・竹内薫のノーベル賞プレイバック講義【第二回】

ニュートリノが「振動」するとは?

 ひとことで言えば「振動」=「種類が変わる」ということです。ここで単純化するためにミューニュートリノとタウニュートリノの2種類で考えてみると、粒子が進んでいく過程で最初はミューニュートリノだったものが、タウニュートリノになり、そしてまたミューニュートリノに戻るということです。

 そもそも3種類のニュートリノが「変身する」っていうのは変な話なんですよ。素粒子は本来性質が決まっているものですから。これを人間に例えてみると、太郎くんが道を歩いていたら途中で花子さんに変わってまた最後、太郎くんに変わるっておかしいでしょう(笑)。でもそれが素粒子レベルでは起きているんです。

 もうひとつ「振動」について視点を変えて説明してみましょう。「音のうなり」って分かりますか? ともに波長が違うブウ~ンという音と、ブウ~ンという音同士を重ねるとフォワ~ン、フォワ~ンと「うなり」が生じるんです。それが聞こえない時と、うなりが生じた時との関係がニュートリノの種類が変わったということに相当するんです。

 梶田先生が最初ニュートリノ振動の研究を発表された時、みんな「そんなものあるものか」と思っていました。でもそれをスーパーカミオカンデ(岐阜県の旧神岡鉱山内にある観測装置)という、カミオカンデがアップグレードされた装置で実証したんです。

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竹内 薫

たけうち かおる


 



1960年、東京生まれ。サイエンス作家。東京大学卒。マギル大学大学院博士課程修了。理学博士。「サイエンスZERO」(NHK Eテレ)のナビゲーターも務める 。

 


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