「保守」を偽装するエセ保守界隈と日本人は決別せよ!【適菜収】
【隔週連載】だから何度も言ったのに 第80回
■エセ保守・バカウヨを封じ込めよ!
先日私は、「哲学系ゆーちゅーばーじゅんちゃん」というYouTubeの番組に出演した。その動画のタイトルは《「保守」はなぜ単なるバ〇を意味するようになったのか》だった。
たしかに今の日本では、バカが「保守」を自称し、デタラメなことを言っている。さすがに危なすぎる状況なので、今回私は『「保守思想」大全――名著に学ぶ本質』(祥伝社)を上梓し、「近代の病」と戦った40人の思想家の言葉を引用し、保守の本質をまとめた。基本的に私の判断や意見はあまり入れずに、保守主義について考えるための必読書から文章を引用し、簡単な解説をつけた。
![](https://www.kk-bestsellers.com/wp-content/uploads/718flUwQ-yL._SL1500_-204x300.jpg)
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第一章「保守主義とは何か」、第二章「近代に対する警戒」、第三章「熱狂する大衆」、第四章「全体主義との戦い」、第五章「誤解されたナショナリズム」、第六章「歴史と古典」に分類したが、すべてが保守主義の本質の説明と密接に絡み合っている。
マイケル・オークショットが「リーダー待望論」を警戒したのはなぜか?
エドマンド・バークがアメリカ革命を支持し、フランス革命を否定したのはなぜか?
カール・マンハイムが近代以前の「保守的性格」と保守主義を混同するなと言ったのはなぜか?
福田恆存が保守主義を奉じるべきではないと言ったのはなぜか?
マイケル・ポランニーが《通俗的科学主義》を批判したのはなぜか?
過去の賢者の議論をひとつひとつ丁寧に振り返れば、そこに共通するもの、つまり保守思想の本質が見えてくる。
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情弱向けのエセ保守論壇誌などを読んでいると秒速でバカになる。たとえば、近代の構造の背後を暴露したフリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェが、保守思想の核心に接近したことも見えなくなる。近代の内部に排除と差別のプログラムが内包されていることを暴露したフランクフルト学派、知識人の中に《大衆性》を見出したホセ・オルテガ・イ・ガセット、教養のある人間でも集団になると《野蛮人》となることを指摘したギュスターヴ・ル・ボン、「世論」が制御できなくなる仕組みについて説明したガブリエル・タルド、大衆が《虚構》を求める構図について説明したウォルター・リップマン、《数値化・抽象》による人間性の否定を指摘したセーレン・キルケゴール、民主主義と平等化が「新しい形の専制」、すなわち全体主義を生み出すことを予言したアレクシ・ド・トクヴィル、市民社会の中からナチズムが発生した構図を説明したエーリッヒ・フロム、マクドナルドとナチスの類似性を指摘したジョージ・リッツァ、国家権力の危険性を指摘したフリードリヒ・アウグスト・フォン・ハイエク、資本が労働力の流動化を要請したから、前近代的な身分社会が破壊され、平等な人間による同質的な社会が生み出されたと指摘したアーネスト・ゲルナー、民族主義や復古主義の欺瞞を指摘した三島由紀夫、「真理の代弁者」を警戒したカール・ヤスパース……。
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その他にも、アイザイア・バーリン、山本七平、エリック・ホッファー、ハンナ・アレント、アントニー・D・スミス、ヨハン・ホイジンガ、折口信夫ら、保守思想を学ぶ上で欠かせない人物を紹介した。
保守思想をきちんと理解すれば、現在、わが国で跋扈する自称保守、エセ保守の類は、ほとんどが保守の対極にある社会のダニにすぎないことがわかるだろう。
文:適菜収
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