レントゲン写真はなぜ白黒? 現代医療を支える物理学のテクノロジー
サイエンス作家・竹内薫のノーベル賞プレイバック講義【第五回】
CTから地球を覗く「ニュートリノ写真」まで
では次にCTは何が違うか? CTも、まずX線で普通にレントゲンをたくさんとるわけです。いろいろな方向から撮るんです。そしてそれを三次元の画像として、コンピューターを使って解析をして断面図を得るのです。いろいろな方向からレントゲンをとれば当然見え方が違うじゃないですか。そして360度あらゆる角度から撮っておけば中がどうなっているか分かる。それをコンピューターで計算するんです。Computed=「計算された」、Tomography=「断層写真術」ということでCTなわけですね。
MRIはもうちょっと難しい。今度は量子力学の話になりまして、MRIは核磁気共鳴と言います。MRIを受けた事がある方、体が揺れているような感じがしましたか? でもあれは体全体を揺らしているわけじゃないですよ、体が振動すると逆に撮れないので。MRIでの「揺れ」というのは小さな原子レベルの話です。その原子レベルの揺れ、すなわち「核磁気共鳴」を利用して映像化します。そうするとCTで見えない柔らかい組織がMRIでは見える。そこが違いますよね。脳内の血管などもくっきりと見ることができる。
こうして見ると、物理学から医療への応用はすごく人類に貢献していると思いますね。もしかしたらそのうち前にお話したニュートリノで「撮影」ができるかもしれない。ただしこの場合、透過する物体は人間ではありません。そう、でっかい地球です。
実際にいまそういう計画があって、地球を通ってくるニュートリノで「撮影」して、地球のX線写真ならぬ「ニュートリノ写真」を撮ろうという計画があります。そうすると地球の内部がCTみたいにのぞき込むことができる。そういった応用はあると思います。いまだかつて誰も地球の内部を見た人はいないので、壮大な夢につながりますね。
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