カリスマ社長が率いる会社は「まるで宗教組織」IT企業3社を去ったウェブ編集者の告白【北野哲】
なぜIT企業では人間が壊れるのか? #2
■宗教の教義と化した「バリュー」
上司としては悪気はなく、逆にいいことをした、とさえ思っているのかもしれない。会社が大事にしているバリューに沿って、必要なフィードバックをしたのだと。
上田さんはC社を「まるで宗教組織でしたね」と振り返る。
C社の社内には、企業バリューすなわち教義を書いた紙があちこちに張ってあるそうだ。IT企業なのに、こんなところはアナログだ。これを朝礼や会議のたびに、スローガンのように読み合わせて、脳内に刷り込んでいく。その読み合わせは、入社1年目の社員に任されていたという。
新卒社員は布教者となり、布教の過程でさらに会社色に染まっていく。「私はイケてるIT企業で働いているんだ」「社長はその会社を創ったカリスマ!社長の教えこそが至高!」と思い込んでしまうのだろう。
そして“教祖”たる社長はますます神格化し、その言葉が絶対となっていく。
「カリスマ社長と、その人を信奉する社員で固められる構図が、IT企業、とくにぼくが在籍してきたベンチャーには多かれ少なかれあると思います。トップダウンで降りてくる“教え”を受け入れられるかどうかですね。ぼくには無理でしたけど…」
C社には「ハードワークせよ」というバリューもあった。
「毎月100時間ぐらい残業しようね、そうしないと仕事なんてうまくできるようにならない、成長しないよ」こうささやき、残業への抵抗がなくなるよう洗脳していたという。
上田さん自身も、仕事が終わるのは、毎日22時~23時。自宅に着くのは24時前という日々だった。