カリスマ社長が率いる会社は「まるで宗教組織」IT企業3社を去ったウェブ編集者の告白【北野哲】
なぜIT企業では人間が壊れるのか? #2
■人間の尊重と事業の成功は、相容れないのか?
現職も含めIT企業を4社経験した上田さんに、なぜIT企業では心を病んでしまう人が多いのか? あらためて聞いてみた。
「IT企業はスピードが命なんですよ。カリスマ社長がいる会社は、大企業が決済を降りるのを待っている間に、社長のひと声で即断即決ができます。そして従業員は、とにかく早く仕事を回していくことが重要視される。それについていけない社員は、置き去りにされて戦力外通告を受けることになると思うんです……」
B社では、社長と社員の距離も近かったという。ともに会社の未来を語り合った社員が、次々と背を向けて去っていくことについてかの社長の心は痛まないのだろうか、と素朴な疑問である。
「効率化にこだわることは、事業を進めていくためにある程度仕方ないと思っていたのでしょう。辞めていく人の意見を逐一聞くより、企業文化に順応してくれる社員で仕事を回していく方が、コスパがいい……っていうか、早いので」

ブルドーザーのごとく事業を推進していくカリスマ社長の影で、上田さんのようにうつ病に追い込まれる社員が後を絶たない。
人間は体や心が元気だからこそ、最大限の力を発揮できる。誰もが信じるであろう“お天道様の教え”のうえに、事業の成長は成り立たないのであろうか。
取材・文:北野哲