なぜ「オタク」は男ばかりなのか?脳科学者・中野信子氏が持ち出した納得のデータ
『脳はどこまでコントロールできるか?』より #1
■男性は女性より30~50%増
ワンドは実験前に、被験者の脳のドーパミン受容体を調べましたが、男性と女性で、受容体の違いや密度の差はなかったとのこと。異なっていたのは、ドーパミンの放出量のみで、男性では、女性より30~50パーセントも多かったという結果になりました。
では、ドーパミンの放出量が多いとどうなってしまうのでしょうか。
一度の刺激で放出される量が多いということは、それだけ快感が強いということになります。すると、再び快楽の刺激を受けたくて、中毒になってしまうリスクが上がるということに……。
男性では、女性よりも覚醒剤の中毒者が多いのですが、この理由のひとつがドーパミンの放出量の違いあると考えられています。
また、イェール大学とコロンビア大学の研究者による別の実験では、アルコールに対する依存性が調べられました。やはりこの実験でも、男性のほうが女性より、アルコールによるドーパミンの放出量が大きいことが明らかになりました。
とくに、快楽・強化・依存の形成などにかかわるとされる、腹側線条体でのドーパミン量が増大していました。男性が女性よりもアルコール依存症になりやすいのはこのためなのです。
また、アルコール依存などに比べるとずっと良い例ですが、「オタク」と呼ばれる人には男性が多いでしょう。これは、男性の脳がひとつのことにハマり、夢中になりやすいために、簡単にはほかの追随を許さないほど、趣味を究めることができるのだということも言えます。
男性のみなさんは、この性質を知った上で、自分の脳をうまく活用してみてください。
仕事で大きな成果をあげる男性は、きっと自然に、自分の脳の性質を利用できているのではないかと思います。熱中しやすい脳を持っているということが自分でわかっていて、仕事に精力を注ぐことができるように、工夫して自分をコントロールしているなあと感じる場面がしばしばあるのです。
文:中野信子
〈『脳はどこまでコントロールできる?』より構成〉
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