杉田水脈を比例で擁立した自民党は最後の一線を越えた【適菜収】
【隔週連載】だから何度も言ったのに 第82回
自民党は7月の参院選比例代表に杉田水脈を擁立すると発表。石破茂は安倍晋三-菅義偉路線に比べたらまだマシではないかと判断を保留していた人たちも、これで自民党と決別する覚悟ができたのではないか。自民党には自浄作用はない。参院選では自民党に票を入れてはならない。新刊『「保守思想」大全――名著に学ぶ本質』(祥伝社)で、過去の賢人が語った保守思想の本質をまとめた適菜収氏の「だから何度も言ったのに」第82回。

■自民党のデマゴーグ要員
3月8日、自民党は7月の参院選比例代表に杉田水脈を擁立すると発表した。多くの国民は開いた口が塞がらなかったに違いない。やっと政界から消えたと思っていたゴロツキが、よりにもよって安倍晋三的なものと距離を置くかのように見えた石破茂政権で復活することになるからだ。杉田は自民党の小選挙区で当選したことはないが、比例では当選してしまう可能性が高い。
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そもそも石破は杉田を批判していたはずである。2018年9月、杉田が性的少数者(LGBT)へ「『生産性』がない」と誹謗中傷した件については、「生産性の理解が全然ない。LGBTの人たちの気持ちを傷つけていいなどということにはならない」と発言。比例中国ブロックで選出されていることについては、「私も首相(安倍)も中国ブロック。1票を入れた方々にわれわれは説明する責任を負っている」と語っていた。
さらには「全く正しいことだとは思わないし、多様な意見があるのだからいいんだという自由民主党であっていいとは私は思わないですね。これでどれほど傷ついた人がいるだろうか」「この方、中国ブロックの比例第1位です。我々中国地方が出してるということになってるわけです。それは本当にいいことだろうか」と疑問視した。
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その後、杉田はさらに暴走し、嘘とデマ、ヘイトを世の中に撒き散らかした。背後にどのような事情があるのかはわからないが、自民党は今回の擁立で最後の一線を越えた。
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ネトウヨ(情弱)が「政党が誰を擁立しようが自由だ」「杉田にも言論の自由がある」と騒いでいた。たとえ自分の意見とは対立する主張であっても、言論の自由は絶対守らなければならない。しかし、嘘やデマ、ヘイトは言論ではない。関東大震災のときに朝鮮人が井戸に毒を流したというのはデマであり言論ではない。それは言論そのものを破壊する。公道にクソを垂れ流す自由はない。
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杉田は自民党のデマゴーグ要員である。基本、噓しかつかない。杉田のパターンは毎回同じである。
① 噓をつく。
② 噓がばれる。
③ それを指摘されると「そんなことは言っていない」とさらに噓をつく。
④ その噓もばれる。
⑤ ごまかす。
⑥ ほとぼりが冷めた頃、同じ噓をつく。
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社会は正常な人間だけで構成されているわけではない。社会の最底辺には、杉田のような邪悪な人間がいる。一番の問題はこのような人物を優遇し野放しにしてきた自民党だ。杉田周辺のいかがわしい連中も、杉田が批判されれば「発言の一部を切り抜いただけだ」「もう問題は解決している」「批判するのはパヨクだ」と妄想の世界に逃げ込み、現実を見ようとしない。
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そこで具体的に、杉田が引き起こしてきた問題について列記しておく。これが「切り抜き」かどうかくらいは、サルでもわかるだろう。
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