一寸の『GON!』にも五分の魂【新保信長】新連載「体験的雑誌クロニクル」9冊目
新保信長「体験的雑誌クロニクル」9冊目

B級というよりC級、D級、なんならZ級のトンデモニュースやオカルトネタ、どうでもいい街ネタ、バカネタを無秩序にぶち込んだ、ごった煮マガジン。ノリとしては「プレスリー生きていた?」「マドンナ痔だった?」などの名(迷)見出しで知られた(かつての)『東スポ』や、エイリアンやUMAネタを独占スクープとして発信していたアメリカのタブロイド紙『ウィークリー・ワールド・ニュース』と同様だ。
創刊当初は「人肉の味は仔牛と同じ! あの佐川一政が衝撃の発言!」「人は誰でも殺人鬼」「自殺の名所 青木ヶ原の樹海で死体を捜そう!」「衝撃! これが首吊り自殺!」「都内女便所大図鑑」といった、それこそ“鬼畜系”の記事もあった。が、月刊化され判型も変わったVOL.7あたりから、その手の記事は徐々に減り、くだらな面白路線にシフト。「音楽パンはうまいか?」と題していろんな音楽を聴かせたパンの食べ比べ、電車の網棚に置いた『GON!』の追跡調査などの実験企画、温泉卓球場全30カ所リストや『ミスター味っ子』全料理データなどの調査ネタが増えていった。
そこから生まれた人気企画が「まずジュー」こと「日本一まずい缶ジュースを捜せ!」である。企画自体はVOL.1からあったが、号を重ねるごとに存在感を増し、表紙での扱いも大きくなっていく。メーカーへの忖度なく名指しで「まずい」と断言する小気味よさはありつつも、むしろ「缶ジュース(コーヒー、お茶等も含む)にこんなに種類があったのか!」ということに驚く。いろんなジャンルの飲料が普通に100種類とか掲載されていて、「コレ集めるだけでも大変だろう」と、つい編集・ライター目線になってしまう。

かく言う私も創刊当時、同誌で仕事をしたことがある。何かの機会に知り合った(何だったかは完全に忘れた)比嘉健二編集長に「今度こんな雑誌作るんだけど何かやらない?」と声をかけられ、「やりますやります!」と二つ返事で参加した。もともとそういうネタは好きだったし、フリーになって2~3年目で、基本的に「来る仕事は拒まず」でもあった。
これまた詳細は忘れたが、簡単な打ち合わせののち企画を出し、結果的に「怪人『トンカラトン』の謎を追う!」「東大駒場寮に体長2mの巨大猫が!」といったフェイクニュースのほか、VOL.1から数号にわたって、担当記事がいくつか掲載されている。
「街で見つけたオシャレなレゲエ」という記事もそのひとつ。いわゆるホームレスの中でも独自のセンスでオシャレな着こなしの人がいる。そういう人をファッション誌のストリートスナップ風に紹介する企画。今ならポリコレ的に完全にアウトだろう。とはいえ、メジャー誌には載らない現場密着ルポとしても意義はあったと思うし、VOL.1に登場してもらったおじさんなんかは空手着にブランド物のネクタイ3本を帯代わりに締めていて本当にカッコよかった。