アメリカ大統領選挙とは一体、何なのか?⑤
大統領選挙は室町幕府と石山本願寺がハイテク兵器を使って戦っているようなもの
倉山満によるアメリカ大統領選挙解説シリーズ第5回
アメリカの実力者を見極める必要性
大正期、石井菊次郎はちゃんとやっていました。
当時のウィルソン大統領も議会も聞き分けがないので、国務長官のランシングをつかまえて交渉し、「石井・ランシング協定」(一九一七年)をとりつけています。
脱線ついでにもうひとつ言っておくと、日本の歴史学者の中には、この「石井・ランシング協定」には議会の承認がなかったから条約ではなかったかのような言い方で難癖をつける人がいます。
確かにこれは単なる行政協定なので、議会の承認は要りません。実際、日本は他にも「日本・クウェート地位協定」(二〇〇三年)や「日本・ジブチ地位協定」(二〇〇九年)というものを国会を通さずに結んでいます。
ですから、いわゆる法律用語の厳密な条約ではないと言われればその通りですが、外国との約束という意味で、広い意味での条約ではあるのです。
この協定によって支那をめぐる日米の争いを止めたのですから、重要な意義のあるものでした。
最近の外務省は劣化が激しく、世界史の重要事項、「石井・ランシング協定」のことを首相のブレーンまで務めた某氏も知らなかったほどです。
日本ではそんな人物でも外交評論家をやれてしまいますし、外交官試験も一般の国Ⅰ(国家公務員Ⅰ種試験)と一緒になってしまい、歴代の外務大臣全員の事績を言えないような人がほとんどです。
『大間違いのアメリカ合衆国』より
明日は、「アメリカ人にとって、他州のことは感覚的に外国」です。