「僕は負けたけど萎縮しない」スラップ訴訟で判決が確定した水道橋博士に、敗訴後の気持ちを聞いてみる「まだ始まってもねぇよ!!」【篁五郎】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「僕は負けたけど萎縮しない」スラップ訴訟で判決が確定した水道橋博士に、敗訴後の気持ちを聞いてみる「まだ始まってもねぇよ!!」【篁五郎】

続・水道橋博士の闘争宣言


水道橋博士の運命は、2022年3月18日を境に大きく変わってしまったと言っても過言ではない。同年の2月13日にTwitter(現・X)で、当時の大阪市長・松井一郎氏に言及。

《これは下調べが凄いですね。知らなかったことが多いです。維新の人たち&支持者は事実でないなら今すぐ訴えるべきだと思いますよ(笑)》

そう投稿し、松井氏の生い立ちから大阪市長に至るまでの数々の疑惑に関する動画のリンクを掲載した。これに松井氏が素早く反応。

《水道橋さん、これらの誹謗中傷デマは名誉毀損の判決が出ています。言い訳理屈つけてのツイートもダメ、法的手続きします》

と訴訟を明言。しかも博士の投稿をリツイートした人にも訴えを起こすことを示唆した。約2年続いた松井氏による水道橋博士へのスラップ訴訟のスタートである。この裁判が、2025年1月23日に終わりを迎えた。判決は水道橋博士の上告を棄却。110万円の賠償金を松井氏に支払うことを命じる大阪高裁の判決が確定したのだ。当サイトは、水道橋博士にどんな思いで戦ってきたのか、直接話を聞いてきた。(篁五郎)


■常に分厚い訴状を持ち歩いてた理由

 

▲「スラップ訴訟」と声を上げ続けた

 

ーーお久しぶりです。

水道橋博士(以下:博士) お久しぶりです。大阪での二審の記者会見以来ですか。

ーーそうですね。早速お話をお伺いしたいのですが、改めて松井一郎氏から訴状が届いたときのお気持ちをお聞かせいただけますでしょうか。

博士 元々Twitter(現・X)で「訴える」と言っていたので訴状を見たときは「来たか」という感じです。あの時は分厚い訴状を持ち歩いて、「俺は松井一郎からスラップ訴訟を起こされた」とアピールしていました。篁さんにもお見せしたことありますよね。

ーーはい。拝見しました。でも、どうして「スラップ訴訟を起こされた」と言って回っていたのでしょうか。

博士 それは元々の僕の方針です。日本では裁判案件になると、政治家を含めて、口を揃えて「裁判で係争中なので発言を控えさせていただきます」と定番の台詞を言うじゃないですか。昔から、このテンプレートな反応は不思議だったんですよ。それで裁判の当事者になったので、知人の弁護士に聞いてみたんです。答えは、『それは裁判で勝つ確率をあげるためだ』と。基本的に裁判官は、判決を下すのに世論に影響されるのがイヤがるそうなんです。だから少しでも裁判官の心証を良くするためには黙っちゃうのが一番良いという今に繋がる風潮になったんですって。

 でも、僕は「それっておかしいよね」と思っていたんです。だからこそ、スラップ訴訟そのものが言論の萎縮を招くことを世間に訴えたかった。だからずっと言い続けていたんです。

ーー弁護士さんは反対したのでは?

博士 僕の弁護士は、最初、元新潟県知事の米山隆一さんでしたけど、やっぱり同じ理由で反対しましたよ。でも、最終的には依頼人である僕の意向を汲んでくれました。

 米山さんは、僕が松井さんから訴訟を起こされて、すぐに名乗り出てくれたんです。他に有志で「無料でいいから自分を代理人にしてくれ」と名乗り出てくれた人がいました。

 米山さんに代理人をお願いしたのは、ズバリ言って彼にも松井さんとの間に物語があるから。維新絡みの裁判で勝った実績もありますし、議員として維新にもいたことある人だからです。向こうの手口を熟知していると思って依頼しました。

 でも、僕が「この裁判をスラップ訴訟だと世間に訴えたい」と言ったときは驚いたと思います。

ーー裁判が始まる前に松井一郎氏の大阪市長・定例会見に乗り込んだのも、そのためですか。

博士 うーん。それはまた違うんです。松井さんは、僕を訴えるというツイートをした直後に「リツイートした方も同様に対処します」と投稿しているんです。これは明白な脅迫ですよ。僕への訴訟はともかく、リツイートした人、無辜(むこ)の市民を裁判に巻き込むことだけはやってほしくなかったんです。

「松井さん、あなたはTwitterで、僕のツイートをリツイートした人を訴えると明言したことで、約4000もの人が怯える必要もないのに、不安な日々を過ごしています。そんなこと僕自身はよしとしません。僕は貴方が原告の裁判は被告として受けますが、反訴も準備します。あなたが4000人を訴える宣言を取り下げるなら、僕の訴えも取り下げます。でも、ボク以外に一人でも訴えたら、必ず反訴します」

 と言って、交渉するつもりでした。突然、記者会見に訪ねて、その後、その場で大阪市役所の記者クラブに申し込みしたけど、定例会見が中止になって聞くことすらできなかったです。

ーー裁判も「松井一郎氏のスラップ訴訟だ」という形に持ち込みたかったのですか。

博士 勿論、そうです。名誉毀損裁判は、被告である僕は常に受け身なんですね。松井さんは、動画のサムネイル画像にある「強姦疑惑」の部分、たった4文字だけに絞ってくる戦略を取ってきました。裁判は、そのことへの反証を出すのに追われてしまいました。自分の訴えを伝える前にいつの間にか負けた感じですね。

 そもそも、ボクは「強姦疑惑」は裁判で既に「松井さんが勝利した」判決済みの噂でしか無いことは、YouTubeのなかでも言っていて、理解しているわけですし、まったく興味を持っていないわけです。

 そんなことより、松井一郎さんが元々は自民党員であり、父親が笹川良一の運転手であり、「勝共連合」育ちで「統一教会」に極めて近いところで、幼少より育った政治家であることを初めて知ったので、「もしそれが本当なら……」ということをTwitterで、読者も映像を見て確認して欲しいという趣旨なんだから、松井陣営が訴えられていることとは全く別の話なんです。

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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