「僕は負けたけど萎縮しない」スラップ訴訟で判決が確定した水道橋博士に、敗訴後の気持ちを聞いてみる「まだ始まってもねぇよ!!」【篁五郎】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「僕は負けたけど萎縮しない」スラップ訴訟で判決が確定した水道橋博士に、敗訴後の気持ちを聞いてみる「まだ始まってもねぇよ!!」【篁五郎】

続・水道橋博士の闘争宣言

■弁護士交代で臨んだ最高裁は「不受理」

 

▲二審になって裁判の様相が大きく変わった理由を語ってくれた

 

ーー二審になったら佃克彦弁護士が加わりました。経緯についてお聞かせいただけますでしょうか。

博士 実は内田樹(思想家)さんと、町山智浩さんから「裁判費用を援助しますよ」と連絡をもらっていたんです。内田さんは、ジャーナリストの山崎雅弘さんが、作家の竹田恒泰さんから名誉毀損裁判を起こされたときに、クラウドファンディングで山崎さんの裁判費用を集めていたんです。

 その裁判で集めたお金がまだ余剰資金として残っているので、山崎さんや寄付してくれた人から了承をもらって、「使ってください」と申し出てくれました。その時に「弁護士一人で戦うより、弁護団を作っていくほうがいい」と言われて、内田先生が推薦してくれたのが佃弁護士なんです。

 彼は、山崎さんと竹田さんの裁判でも全部勝っていますし、ジャーナリストの伊藤詩織さんが杉田水脈元議員を訴えた「いいね」訴訟でも代理人をしていた人です。こうした裁判に強いと聞いていましたのもあって、加わっていただくことにしました。

ーー因みに費用はどれくらいかかりましたでしょうか。

博士 すぐに思い出せないけど、のべの総額を言えば、200万円以上はかかっています。前にも言ったかもしれませんけど、僕はうつ病で休養していたときに老後資金の貯蓄を入院や治療費に使ったので、家計は火のクルマで金銭面ではかなりつらかったので、援助は大変助かりました。

ーー佃弁護士が入って裁判の戦略に変化はありましたでしょうか。

博士 こちらは被告なので受け身なのは変わりませんけど、反証集めに関しては、かなり変化がありましたね。控訴審で提出した証拠の中には、佃弁護士が提案したものがあるんです。

 例えば、僕はTwitterに動画のリンクを貼り付けていたけど、僕がシェアしたリンクから開くと強姦疑惑の部分はすでに終わっていて、松井さんのファミリー企業が大阪市内の映像設備、照明のLED化工事をかなり請け負っているという話からスタートするんですね。

 僕が伝えたかったのも、その点についてだったので、佃弁護士も「訴えたいことは強姦疑惑ではない」と主張してくれたんです。しかも動画では、強姦疑惑について「そのような事実はなかったことが判決で認められました」と言っているんです。それも訴えてくれました。

 松井さんが訴えていた動画のサムネイルも、「強姦疑惑」の部分はブラウザによって、見えなくなることもあるんです。それを見つけたのも佃さんなんですね。かなり丁寧に証拠集めをしてくれました。

ーーそうした主張が高裁でも受け入れられなかったのは悔しいですね。

博士 はい。判決後の会見でも言いましたけど、今でもおかしいと思っています。そもそも松井さんが訴えてきた動画のサムネイルだって、僕が作ったものじゃありません。それでなんで僕が訴えられるのか? 動画を作った人が、すでにサムネイル変えているので、今はシェアしても「強姦疑惑」の文字は出てこない。

 それなのに「名誉毀損に値する」って変でしょ。

 佃さんは判決を聞いた後、天を仰いで悔しそうにしていましたね。あまりに信じられない判決だったんでしょう。僕の裁判なんですけど「大丈夫か」と声をかけたくなるくらい熱心にやってくれたのはありがたかったです。感謝しか無いです。

ーー最高裁に上告しましたけど、審議はされたのでしょうか。

博士 「不受理」なので審議はされていませんね。要するに「最高裁で審議することじゃないよ」ということです。ご存知の方も多いと思いますけど、最高裁って憲法に違反しているのかどうかを争う事例が多いんですけど、僕の裁判は違憲ではないから、取り上げてもらえなかったんです。その結果をもらうのに1年くらい待たされました。それも今の裁判制度のおかしなところですよ。さっさと判断をして欲しかった。こちらはコストがかかっているんですから。

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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