「真田丸展」で貴重な資料を見た!
季節と時節でつづる戦国おりおり第261回
江戸東京博物館、上田市立美術館と巡回して来た「2016年NHK大河ドラマ特別展 真田丸」。9月17日からの真田丸の地元・大阪の市立歴史博物館での開催も、11月6日で終了しましたが、ギリギリのところで何とか見学にGO!
いや、今回は本当に予想をはるかに上回る内容の濃さでした。真田家、信繁に縁がありその存在がよく知られている品々が網羅されている中でも特に、
①大谷吉継が大宰府天満宮に献納した「鶴亀文懸鏡」
②大坂冬の陣開始前に作製された幕府軍各部隊の布陣配置予定図「大坂御弓箭ノ時御城ノ絵図」
③新発見の尊経閣文庫所蔵「大坂御陣真田丸之図」
が印象的でしたので、備忘を兼ねてレポします。
①は吉継の家族であろう「東、小石、徳、小屋」の名が刻まれており、東は吉継の母で豊臣秀吉正室・北政所の取次役をつとめていた東殿を指す可能性が高いのではないでしょうか、小屋は妹でこれも北政所の側に仕えた〝こや〟でしょうから、小石と徳のどちらかが吉継の姉妹の下間頼亮室で、どちらかが信繁正室となった吉継の娘・竹林院である可能性が高いと思われます。
②は、加賀前田利常(松平筑前守)の配置が天王寺口となっており、このあと包囲戦開始ギリギリのタイミングで前田勢の持ち口が平野口東南方へ変更された事をうかがわせます。
また、井伊直孝の名も図中にはありません。これも直前になって譜代筆頭が率先して戦う姿勢を示すために追加されたのでしょうか。
そして③。これが目玉でした。基本的には従来から知られている「大坂真田丸加賀衆挿ル様子」(永青文庫蔵)と同様前田勢から見た真田丸の様子を描いており、文字情報も共通部分が多い事から、どちらかがどちらかを参照して描かれたものだと思います。ですが、③は東郭の空堀と思われる短い三本の線上の仕掛けが詳細に描き込まれており、まるで川魚をとらえる仕掛け網の様な戦場のリアリティを感じさせてくれます。まぁこの3点が見られただけでも行った甲斐がありましたね。
ただ、残念なのは上掲の図録。非常に立派で、内容も豊富なのですが、ただ一点、古文書の翻刻が添えられておらず、読み下しも部分のみか省略されているかなのです。大河ドラマ特別展図録はこういったケースが多いような記憶があるのですが、大河ドラマ連動だからこそ、古文書を読み解けない一般のファンが多く訪れるわけで、そういう人たちにより一層理解と興味を深めてもらうためには不親切過ぎると思われます。ぜひご一考いただきたいものですね。