「ネクストバッターズサークル・大谷翔平」「ジャクソン続投」
日本シリーズの戦略、山本昌はこう読む
大熱戦の日本シリーズが終了。勝負のあやはどこにあった……?
■大谷翔平はジョーカーだった
その大谷選手ですが、第1戦でこそ敗戦投手となりましたが第3戦でサヨナラヒットを打ったように、期待を裏切らない活躍を見せてくれました。第6戦の8回2死満塁での中田翔選手の打席で、ネクストバッターズサークルで準備をしていたシーンを覚えている方も多いでしょう。私はテレビ中継でも解説したとおり「打席に立つわけがない」と思っていました。結果的に投手のバース選手が打席に立ち、貴重な追加点となるタイムリーを打ちました。
この試合に関して、大谷選手は日本ハムの「切り札」でした。
仮にあの回、中田選手が押し出しのフォアボールにならなかったとしても、相手に「大谷が出てくる」と少なからずプレッシャーをかけることができる。そして極端に言えば、延長15回まで試合がもつれるような展開になった場合、あの時点で日本ハムは5人の投手を投げさせていましたから大谷選手に出番が回ってきてもおかしくはありませんでした。最後に抑えとして投げるのか、ロングリリーフなのか? 起用は様々でしょうが、彼はジョーカーとして待機していた。だから、あの場面では絶対に代打には出ないと思ったのです。
最初に栗山監督の采配を勝因に挙げましたが、実際のところどっちに転んでもおかしくない日本シリーズだったと思います。結果的に全試合が接戦でしたから、広島の緒方孝市監督としても、レギュラーシーズンで貫き通した必勝パターンを変えられなかったこともあるのでしょう。これは、ひとつの戦い方としては間違っていません。
例えば、第6戦の8回2死満塁で中田選手に押し出しをした直後、ジャクソン投手を「なぜ続投させたんだ?」と感じた方も多くいたでしょう。それでも、私はこの判断を責めません。彼はレギュラーシーズンで67試合に登板して防御率1.71と抜群の結果を残しました。広島の優勝に大きく貢献したピッチャーなわけです。広島ベンチとしては「ジャクソンが打たれたら仕方がない。なんとか乗り切ってくれ」と腹をくくった結果、あのような展開になっただけだと私は考えています。