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リスクを乗り越え、大ヒットとなった『モンハン4』

『モンスターハンター』シリーズの開発者に訊く!

『モンスターハンター3』ではモンスターの生態表現の綿密さが増す一方、「ガンランス」「双剣」「弓」「狩猟笛」などの武器が登場しなかった。

 この反省を活かし、次作の『モンスターハンター3(トライ)』(2009年8月発売)は制作管理にもこだわった。

藤岡D 『3』では制作進行を管理するプロジェクトマネージャーを立て、フェーズごとに進行を切りました。この結果、『2』では悔いを残した部分まで調整することはできました。けど…。

辻本P ただ、ボリューム面を少し縮小してしまい、そこは反省点です。『3』に関しては、ちょっと「優等生すぎたかな?」という感想です。

藤岡D 進行に気を取られるあまり、“最初の膨らまし”にもブレーキをかけてしまった部分がありました。

 ◆開発で最後に優先した“ある基準” 

 藤岡氏の言う「最初の膨らまし」とは、構想段階におけるアイデア出しのこと。そもそも、制作側が100点満点の商品作りを目指すのは当然の心理。しかし、開発過程では予算や納期の壁にぶつかり、「何を削って何を残すか」という選択を迫られる。この結果、多くの作品は満点ではなく及第点で世の中に発表される。
 芸術の世界ならば、制作期間を度外視して自分の理想を追い求めることもできる。だが、ビジネスにおいてはこうした取捨選択が理想と現実のジレンマを生む。

藤岡D 最初の段階で「これが面白そうだね」というアイデアを出すことはとても大切です。それこそ、最初は100点ではなく200点を目指すくらいに考えられるだけ考えて、広げる必要があると思います。こうして広げたアイデアを制作段階で畳みながらゲームに実装していきますが、削る作業が必ず発生するため、完成品は当初の目標点数から必然的に下がってしまう。だから、最初のアイデア出しで100点以上を設定しないと、それだけ最終的に手に取ったユーザーの満足度が落ちてしまいます。

『モンスタハンター』シリーズ制作のエピソードを話してくれた辻本良三プロデューサー(写真・右)と藤岡要ディレクター(同・左)

辻本P 『3』では実装する武器ジャンルにしても「他の“遊び”を作る部分に力をさきたいから」と、早い段階で種類を絞ってしまったんです。こうした対応は当然ながらユーザーをガッカリさせることになる。実際、「なんで、コレをなくしたの?」という不満もユーザーから出ましたから。もちろん、ゲーム性に関して言えば、『3』はすごく面白いものが作れたと思っています。でも、僕たちが削ってしまったことのマイナスも大きかった。

次のページ納期とクオリティはどっちが大切か

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