かつてセクハラキャラ全開だった石橋貴明も標的に……ネットによる過去のバラエティー・芸人叩きの行く末は?【松野大介】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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かつてセクハラキャラ全開だった石橋貴明も標的に……ネットによる過去のバラエティー・芸人叩きの行く末は?【松野大介】

 ■これで世の中は良くなるか?

 結論を言えば、こんなバッシングで世の中が良くなるわけがない。
 なぜか。本当に世の中を良くしたいと考える1から9割と同じ程度に、叩きたいだけの人がいるから。多かれ少なかれネット上の集団リンチ化するわけで、世の中がよくなるわけないでしょ。これは悪意を持った書き込みをする人が悪いという単純なことではなく、ネットがそういうシステムだから。
 もちろん間接的にテレビ業界はよくなるでしょう。でもそれは「ネットとか週刊誌がうるさいから、飲み会はよそう。スタッフやタレントが嫌がる仕事は無理強いさせないようにしよう」という理由も多い。つまり意識が大して変わってない場合がある。でもそんな声を嗅ぎつけるとマスコミやネット民が「ネットがうるさいから・・・という昭和的な意識の低さ」とか批判しそうだが、もともと「叩きたい」だけの書き込みが多いテーマ(記事)ほどネットの意識が低いんだから、受け手側(当事者)の意識が低くなるのも当然だろう。1割から9割のどの程度かはわからなくても、その割合をちゃんと反映するんだと思うよ。つまり、特定の誰かを貶めたり批判したいだけの人が多い問題(テーマ)は、変わらないんだよ。
 21年、安倍総理が逮捕を免れるためなのか検察のトップの定年を延長しようとした時にネットが大反対のうねりを見せたでしょ。オレは「書き込みも捨てたもんじゃないな」と期待を持ったが、あれもやっぱり安倍総理という個人叩きであり、幻想なんだね。それもあって自民党は変わらないし、閣僚の顔ぶれは選んだ国民の民度(ネット民度含む)を反映している。
 この先、何かのきっかけで芸人がまた過去の芸風や態度で叩かれ、やがて女芸人にも及び、デリケートな女芸人が「誰かを傷つけるつもりはまったくなかったんですが、過去に私の発言で傷ついた方がおられたことに申し訳なく思います。ごめんなさい」と遺書を残すような事態になっても、誰も責任を取らない。それがネットというもので、そこに寄生して商売しているのがマスコミ。しかし80年代に女子アナのパンチラとか胸元ポロリの写真を平気で載せていた雑誌が「コンプライアンス」とかよく言うよね。

■広告争奪戦という視点

 最後に違う視点で見てみる。フジからスポンサーが撤退した際、オレは「これだけ一斉に降りるのは、前からテレビから手を引くきっかけを狙っていたんじゃないか」と考え、知人の業界人に伝えると「確かにそれもあるかも」という答えも多かった。(真相やいかに)
 年々ネットに広告が移動するご時世で、今回が一気に加速するきっかけになったなら、ネット、YouTube側のテレビ潰し、広告の奪い合いという図式にも取れる。
 テレビはさらに金がなくなり今まで以上に歌謡曲など昭和の懐かし映像で番組編成して、一方、広告費が増えているはずのネットやユーチューバー界隈はオリジナル作品を作る才のない人材が昭和のテレビを「コンプライアンス違反だ」と批判ネタを続けたら、オールドメディアもソーシャルメディアも昭和頼みがしばらく続くのかもしれないね。

 

文:松野大介

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松野 大介

まつの だいすけ

1964年神奈川県出身。85年に『ライオンのいただきます』でタレントデビュー。その後『夕やけニャンニャン』『ABブラザーズのオールナイトニッポン』等出演多数。95年に文學界新人賞候補になり、同年小説デビュー。著書に『芸人失格』(幻冬舎)『バスルーム』(KKベストセラーズ)『三谷幸喜 創作を語る』(共著/講談社)等多数。沖縄在住。作家、ラジオパーソナリティー、文章講座講師を務める。

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