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畿内の覇者・今村家文書の世界

季節と時節でつづる戦国おりおり 第262回

 

 京都御苑の東隣り、市おだ歴史資料館では10月30日まで「特別展 鴨川・高瀬川流域の人と暮らし ―今村家文書の世界―」が開催されておりました。

 今村家というのは織田信長以前の畿内の覇者だった三好長慶の被官で京都の代官をつとめた今村慶満からはじまるのですが、子孫も鴨川の西畔・柳原庄村の名主職を相承した由緒正しい家系です。

 筆者の興味は当然ながら三好時代の慶満とその子らの事跡なのですが、山科から京に入る汁谷(渋谷)口一帯の流通を支配して勢力を築いた一族らしく、慶満の嫡男・政次が丹波八上城主の波多野秀忠(明智光秀と戦い織田信長に殺された波多野秀治・秀尚兄弟の義理の祖父)の与力衆であり、丹波から京を経て山科(本願寺の旧跡)―大坂(石山本願寺)と移動する参詣者の宿と荷物輸送を管理していた事が文書からわかります。

 アニメの舞台となった鷲宮神社が今もにぎわうなど、「聖地巡礼」が地元を潤す事は、今も昔も変わりませんね(笑)。

 ともかくも、京都市歴史資料館さんは地味ながらもいつも内容のある展示を無料で見学させてくださるありがたい存在です。
 
 

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橋場 日月

はしば あきら

はしば・あきら/大阪府出身。古文書などの史料を駆使した独自のアプローチで、新たな史観を浮き彫りにする研究家兼作家。主な著作に『新説桶狭間合戦』(学研)、『地形で読み解く「真田三代」最強の秘密』(朝日新書)、『大判ビジュアル図解 大迫力!写真と絵でわかる日本史』(西東社)など。


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