トランプ米国と習近平中国は
南シナ海問題で衝突しない!?
中国の海上覇権戦略を知る。
中国専門ジャーナリスト福島香織が語る「チャイナリスク2017 衝撃の真実」
さらに言えば、国際仲裁裁判所で判決が出たにもかかわらず誰も中国を止められなかった事実によって、「国際社会」の権威の失墜が明らかになる。国連という枠組みの国際社会の秩序の中で法律に基づいて決めたことが、強大な軍事力と経済力を持てば無視できることを中国がその行動で示すことになる。
国際イメージを損なう、国際社会で孤立するという、常識のある国にはできない選択を一三億の人口と世界第二位の経済規模を持つ中国はやってしまい、国際社会は中国を制裁できないどころか、アンチ米国のロシアやアフリカや東南アジアの小国六〇カ国が中国支持に回る。こうなっては国際秩序や国際ルールって何なのだ、という話になる。
現在の国際ルールは、すでに無力化しかけて、強大な軍事力と経済力を持つ国が粗暴な恫喝と懐柔で、新たなルールメーカーになろうとしている。南シナ海における今の中国の動きは、そういう意味もあるのだと想像する。
そう考えれば、仲裁裁判所の判決が中国の主張を退けてよかった、と安心するのは早い。中国が判決に従わざるを得ないように、経済力、軍事力を備えた外交力を駆使してプレッシャーを与えていかねばならないこれからが、正念場といえよう。
※福島香織著新刊『赤い帝国・中国が滅びる日』重版出来記念、Amazon中国情勢ジャンルでランキング1位。(2016.11.11現在)。本文抜粋。
著者略歴
福島香織(ふくしま・かおり)
1967年、奈良県生まれ。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社大阪本社に入社。1998年上海・復旦大学に1年間語学留学。2001年に香港支局長、2002年春より2008年秋まで中国総局特派員として北京に駐在。2009年11月末に退社後、フリー記者として取材、執筆を開始する。テーマは「中国という国の内幕の解剖」。社会、文化、政治、経済など多角的な取材を通じて〝近くて遠い国の大国〟との付き合い方を考える。日経ビジネスオンラインで中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス、月刊「Hanada」誌上で「現代中国残酷物語」を連載している。TBSラジオ「荒川強啓 デイ・キャッチ!」水曜ニュースクリップにレギュラー出演中。著書に『潜入ルポ!中国の女』、『中国「反日デモ」の深層』、『現代中国悪女列伝』、『本当は日本が大好きな中国人』、『権力闘争がわかれば中国がわかる』など。最新刊『赤い帝国・中国が滅びる日』(KKベストセラーズ)が発売即重版、好評発売中。