糖尿病、動脈硬化、認知症…… 歯周病が引き起こす合併症のホント
【第4回】斎藤先生がこっそり教える 歯医者のホント~「歯科の駆け込み寺」~
■生活習慣病とも相関関係がある
歯周病とは一見、結びつきそうもないメタボリックシンドロームも関連性がある。歯周病巣から放出されるLPSと呼ばれる毒素が血糖値を上昇させ、太りやすい体質を助長してしまうのだ。一方、メタボになると、歯周病にかかりやすくなることもわかっており、やはり相互的な関連がある。
最近では、生活習慣病の延長線上にあると言われる認知症との関連も指摘されている。歯周病菌が起こす炎症の際に発生する炎症物質サイトカインが血液によって脳に運ばれると、記憶に関わる海馬にアミロイドβというたんぱく質が溜まっていく。それが増えすぎると、記憶の能力が著しく低下し、認知症を引き起こすのである。
ほかにも、関節リウマチ、腎炎、ED(勃起不全)、低体重児早産などとの関連も報告されている。このように、からだ全体にさまざまな症状を引き起こす歯周病だが、斎藤歯科医師はあまり深刻にとらえるのも考えものだと話す。
「歯周病が多くの生活習慣病と関連していることを知っておくことはマイナスにならないと思いますが、あまり神経質になる必要はない。そもそも、歯周病菌が血管に入って、からだじゅうに症状を引き起こすといっても、実はこの菌は人間が持っている常在菌のひとつ。あって当たり前の菌なのです」
■正しい知識でダマされない
問題なのは、口の中で歯周病菌が増えすぎた場合。歯にくっついた歯周病菌をからだの免疫が攻撃しようとして、歯を支えている歯槽骨を溶かしてしまうのだ。
「普段から、しっかりと歯みがきなど、歯のケアしていれば、歯周病菌はそこまで増えないし、この菌が関連するとされる生活習慣病のリスクも、それほど高まることはないのです。ところが、ここでも不安をあおって商売に結びつけようとする歯医者がいる。まるで『歯周病が万病の元』と言わんばかりの説明をして、心筋梗塞や脳梗塞にならないために、歯周病で悪くなった歯は抜いてしまいましょうと誘導していくのです」
斎藤歯科医師は「あまりにもモラルが欠如した歯医者が多すぎる」と嘆く。歯科業界で横行しているステルス・マーケティング(ステマ)も、モラル欠如を示す一例だろう。ステマとは、顧客に宣伝と気づかれないように行う広告手法。ネット上では歯科のまともな広告に混じって、ステマが氾濫しているのだ。
歯周病に悩む50代の女性が無料の歯科治療相談サイトを開くと、誠実そうな歯科医師が懇切丁寧に回答。その歯科医院に通院し始めると、歯を抜かれ、望んでもいないインプラント治療に踏み切る羽目になったという。こうした例があとをたたないのだ。
「私たちは騙し合いをやっているのではないのです。緊急事態宣言が出ているようなときに、こんなことをやっているようでは、歯科の未来は真っ暗としか言いようがありません」
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