重要‼️ 新型コロナ対策「PCR・抗体・CT」検査はよく間違える【岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義⑨】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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重要‼️ 新型コロナ対策「PCR・抗体・CT」検査はよく間違える【岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義⑨】

命を守る講義⑨「新型コロナウイルスの真実」

◼️PCR以外の検査法

 PCR以外の検査法として、迅速キットの開発も進んでいます。
迅速キットでは遺伝子ではなくて、例えばウイルスの表面に付いている酵素とかを使って検査します。
迅速キットを使った検査は、インフルエンザでよく利用されてきました。ウイルスをサンプリングして、ウイルスのタンパクに反応する試薬を付けるとピッと赤い色がつくんです。この反応を使って、新型コロナウイルスへの感染を
15分ぐらいで診断できるキットを、横浜市立大学のチームとかが開発しています。
ただし、この方法にもいくつか問題があります。
横浜市立大学が開発したのは抗体検査で、人間の体がつくる免疫グロブリンの有無を調べます。ところが人間の体というのは、感染してもすぐには免疫グロブリンはつくれない。感染してからだいたい1週間ぐらいかかります。
ということは、これにもやっぱり偽陰性の問題がある。つまり、感染初期には体内に免疫グロブリンがないので、その段階で検査しても反応しないんですね。
抗体検査について、ぼくが気にしていることがもう一つあります。
すでに説明したように、これまでにも6種類のコロナウイルスが人間の体に感染してきたのですが、どれもタンパク質が似ているんです。だから時々こんがらがってしまう。
つまり、この方法では、従来の風邪の原因になるコロナウイルスに反応してしまうことがあるんです。これは偽陽性の問題ですね。
この検査の手法で、普通のコロナウイルスと新型コロナを精度よく区別できるかどうか、まだ十分な検証がされてないので、ここは注意のしどころです。

 CTで検査をする話も出ていますが、CTには逆の問題があります。それは、新型コロナウイルスによる肺炎でも、あるいは他のウイルスの肺炎でも、全く同じように見えることがしばしばあるということです。
新型コロナウイルスの患者さんを100人集めてきてCTを撮ったら、大概の患者さんに何かしらの影が見つかるかもしれないけど、だからといって、影があるからコロナだとはいえない。もしかしたら違うウイルスによる肺炎かもしれないし、場合によっては抗生物質で治す病気(細菌性肺炎)なのかもしれません。

 CTの利用には他にもいくつか厄介なことがあります。
CTでは放射線を当てないといけないので、その放射線自体がそもそも体に毒だということが一つ。
もう一つは、CTでは患者さんを装置に寝かせて、いろんな計器で測って機械を使って撮影するのですが、そこで二次感染が起きるリスクがあることです。CTは医師だけでは撮影できなくて、診療放射線技師さんという専門の職業の人が撮影することになります。
病院の中で二次感染が起きるリスクは最小限にとどめたいので、「コロナの疑いがあるから何でもかんでもCTを撮ろう」というわけにはいかないのです。

 ここまでの話の要点を整理すると、つまり、検査はよく間違えるということです。
「医学的な検査は正しい」というのは、じつは間違い。多くの医者も誤解しているんですけど、検査はしょっちゅう間違える。ここを理解しておくことが、すごく大切なんです。(「新型コロナウイルスの真実⑩​」へつづく)


 【注】本書『新型コロナウイルスの真実』は現在、発売即重版となりましたが、書店の休業などで「お手元に届かない」との多くの皆さまからお問い合わせが入っております。最新刊でありますが、本書の第1章と第2章を「全文再編」連載という形で、皆様にお届けいたします。著者・岩田健太郎先生のご厚意により、最適な感染症対策への一助となるように専門家として何度もお読みいただけるようにとご配慮いただきました。皆様やご家族、多くの方々の安全を祈念申し上げます。なお全国の書店で配本されていますが、くれぐれも「外出」の際は感染経路と感染の知識を踏まえ、ご行動されることを衷心よりお願い申し上げます。


  

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発売即重版3刷
『新型コロナウイルスの真実』
岩田健太郎医師・著

 

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岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


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