給付金10万円で喜んでいていいのでしょうか?【中野剛志・新型コロナ緊急事態宣言下の財政政策、その陥穽を問う】
◼️「1人あたり一律10万円給付」の新たな問題点
4月17日、安倍首相より、1人あたり一律で10万円の給付を実施するとの発表がありました。
所得制限を設けた上での一世帯当たり30万円の給付のはずだったのに、所得制限がなくなるという異例の大きな方向転換です。
もっとも、コロナ危機という緊急事態ですから、政治決断によって、このような突然の方針転換があるのも、やむを得ないことです。
また、所得制限を設けないのも、給付するスピードを重視したのでしょう。緊急事態では、スピードは特に大事です。
「1人あたり一律10万円給付」については、これを歓迎する声が多いようです。
しかし、本当に喜んでばかりでいいのでしょうか?
私は、次の二点が非常に気にかかります。
一点目は、政府から、一人当たり10万円の給付金を受け取っても、それを使って消費すると、その10%が消費税としてもっていかれるということです。
収入がなくなってしまい、10万円全額、生活費として使わざるを得ない人たちには、税率10%の消費税が課せられます。つまり、実際に、10万円ではなく、9万円しかもらえなかったということになります。
他方、収入が多い人は、10万円を消費しないで貯蓄すれば、消費税でもっていかれることはありません。
そもそも、消費税という税制には、低所得者の方が重くなるという「逆進性」があるのです。
つまり、低所得者ほど、収入に占める生活必需品の購入費の割合が高いので、消費税の負担感は、高所得者よりも低所得者の方が重くなるのです。
同じ税でも、所得税であれば、収入がゼロになった人に対しては課税されません。しかし、消費税は、収入がゼロになった人でも、消費をする限り課税されるという、無慈悲な税制なのです。
しかし、変だとは思いませんか?
なぜなら、もともと、政府が「一世帯当たり30万円の給付」を決めたときは、所得制限がかかっていました。つまり、給付金を本当に必要としている低所得者に限定して配ろうという話だったのです。
しかし、そのように低所得者への配慮を重視していた政府が、どうして、低所得者の方がより重くなる消費税を増税したのでしょうか?
給付金を出すときは低所得者に限定しようとしたのに、税を課すときは一律。これでは、一貫性がありません。
今回、給付金について、所得制限をなくすように方針を変更したのは、給付のスピードを重視する観点からは、正しいとは思います。しかし、低所得者への配慮も、やっぱり大事でしょう。ならば、逆進性のある消費税は、廃止すべきではないでしょうか。
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