TPP上陸を前に学校給食について考える
『地産地消』の生き方が日本を救う
TPP問題で揺れ動くさなか、ぜひもう一度、考えてほしい日本の「食」問題
◆輸入に頼る日本の「食」に未来はない
国内の自然災害の影響で学校給食が中止になるのが、日本の実状です。
近年の不安定な国際情勢の下で、安全で、安定した食料が10年、20年先まで輸入される可能性は、極めて低いと言わざるをえません。
なぜなら、食料は基本的に生産した国のものだからです。
現在の日本の食料自給率は39%です。61%は輸入食料で賄われています。
先進国で言えば、アメリカ127%、フランス129%、ドイツ92%という食料自給率の数値です。
日本では、輸入食料が市場に氾濫し、特に都会生活者は、農地で働く農民の姿を見ることもなくなってしまいました。食料の自給を制限し、食料の外国への“依存”が「食」を大切にする心を欠如させたのです。
1954年に制定された『学校給食法』により、主食が“ごはんからパン”に替わりました。
当時、小学校に入学して洋式の食生活に慣れた人々は、現在で60才代になっています。50年以上にわたる国の食料政策が、国民の大半を洋式の食生活というライフスタイルに変えてしまったのです。
そして、それは文科省の教育の成果でもあったわけです。
国は食料輸入政策というマッチで、食の乱れに火を付けておきながら、食生活の乱れを国民のポンプで消しなさい、と『食育基本法』のなかで述べているのも同然です。
24時間営業のコンビニエンスストア、ファーストフード店、ファミリーレストランでは、おいしいハンバーガー、彩りのいいコンビニ弁当、甘いドーナツ、ジューシーなフライドチキン、香りのいいチョコレート菓子、家に帰ればお湯を注ぐだけで食べられる麺類、食品添加物がいっぱい入ったおにぎりやパン類、また高カロリーで栄養価の乏しいジャンクフードと呼ばれる食品類が、テレビコマーシャルなどに誘発されて大量消費されています。
肥満や生活習慣病の原因は、安い輸入食料を素材にして、小学生や中学生でも買うことのできる価格を設定し、テレビコマーシャルなどで触発して、企業の論理で食環境のフードシステムをつくっています。
私たちの日常の食卓が、輸入食品で溢れていることに異論をはさむ余地はありません。
このままでは、わが国の農水産業は消滅してしまいます。それは、地域を失うことによる日本人としての終焉を意味しています。
「価格の安い国から輸入した方が得だ」という「依存」を助長する経済優先主義で、食料輸入政策をとり続けていることに、果たして未来があるのでしょうか?
TPP問題で揺れ動くさなか、ぜひもう一度、考えてほしい問題です。
学校給食の問題に端を発して、「食育」を述べてきましたが、「食育」は子どもたちの問題だけではなく、その子どもたちを育てている親の問題であり、社会全体の問題なのです』
『「地産地消」の生き方』(島﨑治道・著/KKベストセラーズ)
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