安倍晋三首相は理解していない!
トランプ大統領が誕生する
「民主主義の本質」について
作家・哲学者の適菜収が「安倍政権の無能と欺瞞」を討つ!
一方、「民主主義」が人類の歴史に登場するのは一八世紀のことです。
紀元前に発生した古代ギリシャの民主政が単なる政治制度だったのに対し、民主主義はキリスト教から派生したイデオロギーです。ジャン=ジャック・ルソー(一七一二~七八年)らに代表される近代啓蒙思想家は、自然権(人間が生まれつき持つ普遍的権利)なる概念をもとに人民主権を唱えます。自由、平等、人権といった諸価値は次々と神格化されていく。
それがフランス革命などの蛮行として現れたのは周知のとおりです。
フランス革命下においては、理性が神の位置に押し込まれた。
マクシミリアン・ロベスピエール(一七五八~九四年)は、一七九四年六月八日、テュイルリー宮殿で「最高存在の祭典」を開きます。理性により社会を合理的に設計することを宣言したわけですね。ロベスピエールは「神が存在しないなら、発明する必要がある」と言いましたが、こうして理性は万能のものとして祭り上げられた。
その結果、発生したのは地獄です。
歴史家のモーゼス・フィンリー(一九一二~八六年)も指摘するように、民主主義が危険なイデオロギーであることは西欧では常識でした。だから、しばらく前までは、民主主義はアナーキズムと同様、狂気のイデオロギーに分類されていたのです。