三者凡退がアピールにならない……甲子園で感じたプロ野球トライアウトの厳しさ
お笑い芸人・杉浦双亮の挑戦記〈33〉
チームメイトのトライアウト受験を観にいったサブロク双亮が感じたこと
■トライアウトにあった結果だけじゃない壁
連載の更新が遅れてすみません。サブロク双亮です。今回はちょっと、考えさせられたことについて書きたいと思います。
僕は甲子園球場にいた。いた、と言ってもグラウンドではなくスタンドだ。
この日、甲子園球場ではプロ野球のトライアウトが行われていた。各球団のスカウトが集まり、NPB経験者でいま12球団に籍を置いていない選手が再び、NPBへの扉を開くために、その実力を披露する場所だ。
これまで多くのメディアで紹介されてきたこともあり、スタンドはもの凄い熱気だった。聞くところによると1万人以上のファンが詰め掛けたという。プロ野球という華やかな世界に再び挑戦する、そのストーリーは多くの人の夢のストーリーでもあるのだな、と思った。
今回、僕が甲子園に向かった理由はテレビ番組の企画のひとつで、それも愛媛マンダリンパイレーツのチームメイトが受けに行っていたからだ。その選手とは、北方悠誠と古村徹。ふたりとも、横浜ベイスターズ(現在のDeNAベイスターズ)に指名され、将来を嘱望された投手だ。
北方投手はベイスターズに在籍した当時、ウィンターリーグで158キロを記録したこともある速球派。愛媛マンダリンパイレーツでも軽々と150キロを超す球を投げる姿に、なんども「すごいなあ……」と唸らされてきた。
古村投手は左投げで、スライダーがいい。今シーズン26試合に登板して防御率0.80と圧倒的な結果を残してきた。
ふたりともなんとかいいアピールをしてプロの世界へふたたび舞い戻り、活躍してほしい。そんなふうに願いながらグラウンドを見つめていた。
投手の場合、トライアウトで投げられるのは3打席と決まっている。そして結果だけを見れば、ふたりともひとりのランナーも許さない素晴らしいピッチングだった。すごいなあ、ひとまずは良かったな……と思いながら見ていたのだけれど、ここでふと気付いた。
「あれ、これってアピールになっていないんじゃないか……」
そう思ったのは北方投手のマウンドだ。
3人を簡単に打ち取ったものの、その内容を見ると一人目が、初球で凡退。二人目が二球目で凡退。三人目が初球で凡退……たった4球で終わってしまったのだ。抑えた、でもアピールポイントを見せられない……そんな結果だったように思えた。実際、北方投手の最速は144キロ止まり。これまでそんなことはなかった。
結局、ふたりにはまだプロからの声はかかっていない。高きハードル、高き夢。僕は独立リーグですらものすごいレベルだと思っていたのに、そんな中で活躍した選手でさえ翻弄をする世界。改めてプロのすごさ、そしてトライアウトという現実の難しさを感じさせられた。
ふたりは来年も愛媛マンダリンパイレーツでプレーをする。
そのマンダリンパイレーツは、弓岡監督が退任し、加藤コーチがアルビレックス新潟の監督になることになった。キャプテンの鶴田は引退。何度も紹介した伴ちゃんはプロを目指し、海外のリーグのテストを受けると言う。メンバーが大きく様変わりする。
こんな言葉を聞いたことがあるだろうか。
「独立リーグは、夢を追う場所でもあり夢を諦める場所でもある」
今年の11、12月は生まれて40年にして知った新たな世界にちょっと感傷的になったりしている。ではまた――。
あ、そうそう。今月の13日、17時30分から今シーズンを振り返ったトークイベント&1打席対決をやります! 参加無料なので、ぜひ会いに来て下さい!