あえて売上を下げる
『コップのフチ子』メーカーの変わった経営方針
売上高18億円から17億円にダウン。でも利益は同じ。 なぜ?
シリーズ販売累計1100万個(2016年12月現在)を突破した『コップのフチ子』をはじめ、『土下座ストラップ』(累計300万個)や『ここは俺がくいとめる!! お前は先に行くニャー!!!』(累計300万個)など、カプセルトイ業界で数々の大ヒットを生み出し続ける「キタンクラブ」。
「20万個売れればヒット」と言われる同業界において、この数字は驚異的。従業数わずか10名弱のカプセルトイメーカーが、なぜ大手に張り合えるのか? キタンクラブの主宰・古屋大貴氏に経営の秘密を尋ねた。
「大きな会社って、嘘をつかなきゃいけないんですよ」(古屋氏)
この言葉は、インタビューが「企画の出し方」に差し掛かったなかで、古屋氏から飛び出した言葉だ。もともと大手カプセルトイメーカーに勤務していた古屋氏は、大手特有の煩わしさを嫌というほど経験してきた。
「大きい会社で企画を通すためには、社員レベルの会議や部長レベルの会議、役員レベルの会議など、いくつものプロセスが必要です。もちろん大手だからこそ、こうした一定のルールが必要なのですが、企画を通す過程で嘘が生じやすいんですよ」(古屋氏)
会議を重ねるうちに、上司や重役、他部署からさまざまな指示が入り、いつの間にか「当初の企画から大きく変更」となるケースは珍しくない。古屋氏が独立した理由、そして小規模の会社にこだわる理由は、次の言葉に集約されている。
「『本当はコレをつくりたかったのになぁ』みたいな気持ちで仕事したくないじゃないですか」(古屋氏)
現在、キタンクラブの総従業員数は役員を含めて計13名。企画のスピード感や社員同士の意思疎通を考慮すると「社員10名以下」が理想だという。
「僕自身、全社員に目が届かなくなるし、コミュニケーションも不足してしまう。あと、大所帯になると社員旅行のときに宿がとりづらいし、団体行動が難しい(笑)。そうなるともう“つまらない”じゃないですか。僕は、つまらない要素を可能な限り排除して、おもしろい要素だけにしたいんです」(古屋氏)
月に一度の企画会議でも、キモとなるのは「おもしろいか否か」だ。「売れるか否か」ではなく、何よりも優先されるのは、企画者本人、そして社員が「おもしろい」と感じられるかだという。